第13話 お散歩する権利

 兄さんが冒険者登録してから、半年が経った。

 今では一人で狩りに出かけるようになっている。

 スキル『混』を使って、手勢を増やしすぐに活躍し始めると思っていたのだが、現実はそう甘くなかったようで、かなり苦労したらしい。

 僕は、ある程度支配下におけるものなのかと勘違いしていた。

 兄さんから聞いた苦労話は、こんな感じだ。


 まず、本能的なものか混ぜた後すぐ逃げてしまうのだとか。

 兄さんには申し訳ないが、なんとなく逃げていく生物の気持ちもわかる気がする。

 次に、知能の問題だ。

 逃げなかった個体を手駒としても、知能が低ければ命令することもできない。

 となると、一定以上の格を持った生物である必要がある。

 尚、動物では育成に時間がかかりすぎる。

 よって、動物より知能の高いことが多く、成長も早い魔物が対象となる。

 動物と魔物の違いは、体内に魔石があるかどうか。兎の角のように、外見でわかることがほとんどだ。例外もいるが……。

 で、まずお約束のゴブリンを試したらしいのだが、失敗に終わったらしい。

 上下関係を理解させることはできるし、ある程度の指示には従わせることができたようなのだが、指示以外のこともやってしまう。よくある、無能な部下ってやつだ。

 たまに賢い個体もいるようなのだが、やはり元が醜悪なゴブリン。多少知恵を付けると、裏切る。

 ちなみに、ゴブリンを混ぜた時、何を増やしていたのかは聞いていない。


 そんなこんなで、半年が経ってしまったようだ。

 現在は、父さんの協力のおかげもあってオオトカゲみたいな魔物を手懐けることができたようで、連れ歩いている。足が多いが、気にしてはいけない。

「オオトカゲって大丈夫なの?」と心配になり聞いてみたが、騎乗用の立ちトカゲとかもいるわけで、そういった説明をされ納得した。

 名前は『オータロウ』で、由来はそのまま。オオトカゲの一番目で太郎。


 今後増えることが予想される兄さんの手勢を、現在の我が家では抱えきれなくなることは簡単に予想できる。

 てことで、兄さんは近場に引っ越しをする予定だ。

 勝手に開拓して、家を建てて良いのか両親に聞いてみたが、問題ないらしい。

 領主としては、生活圏が広がる可能性もあるし認めているのだとか。

 ただし「場合によっては接収されることもある」とのこと。

 なるほど。これだと、領主にほとんどデメリットないもんね。

 生物のナワバリ問題等も予想されるが、それ言いだすとキリがないし。



 そんな、兄さんを羨ましがる奴がいる。そう、僕だ。

 基本的に一人での行動は、家の周辺しか許されていない。

 元の世界に比べて、危険なのは理解しているつもりだけど、素材集めのために近くの川に行ったりしたい。

 必死にお願いした結果、パン太を連れていれば川までの許可がでた。

 パン太様様である。

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