第15話 初めての作品
七歳の誕生日。
それなりに稼げるようになってきた兄さんは、僕に本をくれた。
『発動体と魔道具作成入門』という本だ。
それにしても、両親でも手に入れることが出来なかった物を、どうやって手に入れたのか……。
文字については、勉強の甲斐もあって問題なく読み書きできるようになっている。
早速読み進め、簡単な魔道具を作り上げることが出来た。
なぜ今まで作ってこなかったかだが、知識もなく作って暴発等の事故が起こる可能性もあったという点が一つ。もう一つが、ただ魔石と素材を繋げればいいという物ではなかったという点だ。
考えてみれば当然のこと。そんなことでいいなら誰にだって作れてしまうわけで、職人なんて必要なくなってしまうし、もっと普及しててもおかしくない。
今回貰った『発動体と魔道具作成入門』には、核となる『魔法陣』が載っていた。初級用のみのようで、更に上を知るにはだれかに師事するか、もっと高価な本が必要みたいだが……。
で、完成したのが『ポタポタ水の貯まる魔道具』である。当然使われた素材は、例のキセルっぽい発動体だ。
知っている物を使い、想像したものが完成する。小さな一歩だが、大切な検証でもあった。
うれしい反面(想定通りとはいえ、ちょっとしょぼい)と思っていたのだが、両親は大変喜んでくれた。
僕が作った初めての作品というのもあるだろうが、水を汲む作業が減るというのは思っていた以上に大きかったらしい。放置しておけば、それなりの量にはなるしね。
更には、出力が低くなっている分魔石の持ちが良いみたいだ。
現在はまだ検証中ではあるが、すでに十日以上動き続けている。
この先の計画としては、まず魔石の種類と効果の検証。
どの魔物の魔石が、どういった効果でどの程度利用できるかは、基本的な物なら本に載っている。
しかし、僕のスキルで変化したものが、そのまま当てはまるのかというと絶対とは言えない。
そして、ある程度実践にて知識を蓄えたうえで素材の検証に入る予定。
といっても、未だに僕が手に入れられる素材なんてたかが知れている。
それでも、それなりにデータ取りの時間が必要となるだろう。
なんとなく過去に経験した、電池式の商品の稼働時間の検証を思い出した。
一定時間ごとに状況を確認する。更には、電池の種類による同様の作業。マンガン、アルカリなどなど。
家電屋さんでみるメーカー以外にも、一般家庭で使われる物として百均の海外製も候補にあがるわけで、それなりに時間がかかる。
全てがカタログスペック通りなら楽なのだけど、たまにニュースでみるが、日本製ですら偽装等で違う場合もあるし必要な作業だ。後々、トラブルが起きるよりマシ。
魔道具の名前が長いので『ポタ水』と呼ぶことに決めた。
初めての作品が完成し、効果も良さそうでテンションが上がっていたからだろうか。
(検証が終わったら、売るのもありだろうか?)なんて宝くじが当たった場合を想像するような気分になっていた。
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