第16話 鉱脈

 最近、我が家を訪れる人も増えてきた。

 これは、僕のポタ水が評判になったわけではなく、鉱脈が見つかったからだ。


 以前より、魔物の数が増えていた為に山や森に入る冒険者が増えていた。

 更に言えば、調査目的で比較的奥地へ進む人もいたらしく、その際に鉱脈が発見されたというのだ。過去の調査は、手抜きだったのだろうか?

 そんなこんなで、発見し報告すると少なくない額の褒賞が貰えるわけで、冒険者たちはやる気に満ちている。


 この地方が子爵様に与えられて六十年弱。

 今後の調査次第で鉱床ということになれば、この領地の価値は大きく変わることとなる。

 貴族の価値観や常識ってのがわからないが、以前の領主が権利の主張とかあるのだろうか。

 こういうのって、なーんか嫌な予感がする。

 巻き込まれなければ良いのだが、比較的場所が近いってのもあって、少々心配になってしまう。


 

 兄さんが、実家に顔を出す機会が減ってきている。

 お散歩ついでに、兄さんの家に行き理由を聞いてみた。

 兄さんも一攫千金を狙って忙しいのかと思っていたが、違うらしい。

 なんとスキルが成長したというのだ。

 正確には、本人の腕が上がったのか、スキルというものが成長したのかは、わからないらしいが。


「以前は同種しか混ぜることができなかったけど、変わった」

 そう説明しながら、羽の生えたカエルを見せてくれた。

 これは『キメラ』と呼んでいいのだろうか?

「成功はしてるんだ。羽も動かせてる。でも、飛ぶには至っていない。バランスの問題なのかな? 難しいね」

「羽増やしてもだめなの?」

「うん。動かす器官の問題か、俺の能力不足か。まだわからないしうまくいってないけど、楽しい」

「新種発見! とかって騒ぎにならないように気を付けてよ」

「わかってる。これ以上この周辺が騒ぎになっても面倒だし」

 そう言いながら兄さんは、少し嫌そうな顔をした。

「ところで、バウ君の方はどう?」

「まだデータ集めてるところ」

「そっか。助手とかいれば、いいかもね」

「いればね。さて、そろそろ魔道具チェックしなくちゃいけないし戻るね」

「はいはい。家電っぽい物が出来るの期待してるから」


 以前から言っていたが兄さんは僕に、家電のような物を期待している。

 お互い便利な生活を知っているだけに、不便な生活に慣れたとはいえふとした瞬間に欲しくなってしまう。

 まずは何から作るべきだろうか。

 色々と欲しい物があるので、悩んでしまう。

 親孝行もしなければならないだろう。

 となると、無難に効率の良い水の出る魔道具か。

 コンロみたいな物も、あると便利だよな。



 家への帰り道に(移動用に車やバイクみたいな物があるといいな)なんて考えたが、パン太と一緒だとバイクにはサイドカーが必要なことに気付いた。

 想像すると、なんだか可笑しくなってしまった。


 

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