第60話 大量発生5
大きな狼が去った後、残された死んだ熊の判断に迷う。
これって持って帰っても良いのだろうか?
幸いなことにこちらにはジジイがいるので、この大型の熊持ち帰ることは可能だ。
「あの狼、背中に蜘蛛を乗っけておったの。それにしても立派な
その言葉を聞いて、有名な漫画の一団を思い浮かべた。「まさか狼が」って思うと笑ってしまった。
そのまま持ち帰って恨まれても困るので、熊は頂いて代わりに持っている燻製肉を置いて行くことにした。
興奮状態が落ち着くとまた腐敗臭が気になってしまったので、急いで元来た道を戻って行く。
戻ってから諸々を報告すると、当然叱られた。「なぜ危険にわざわざ突っ込んでいくのか」と。
僕としては、リリーが走って行った時点で放っておけないわけだけど、それは黙っておいて素直に反省の態度を見せておいた。
オスカーが注意程度で済んだのは良かったと思う。これが貴族の家なんかだと処分されかねないもんね。そう考えると自分自身が叱られたことより、そちらの方でしっかりと反省することになった。
日がくれる前に調査隊は戻って来たので、昼の件を報告する。
明日わざわざ町にいかなくて済んだ。
翌日から、当然だが僕はお散歩禁止となった。
期間は、調査が完了して安全が保障されるまで。
そうなるとやることと言えば、お仕事と開発となる。
今回のことでいろいろと考えさせられた。
氷の魔法の扱いが上達したことで、多少の魔物くらいなんとでもなると思い込んでいたが、昨日の赤熊のような威圧感に晒されると経験不足からか思い通りに体は動いてくれない。こういった場合、常に一定の効果を発揮する魔道具の方が使い勝手が良さそうなので、緊急用の物をいくつか所持しておくことに決めた。
候補としては、一時的にでも相手を怯ませる熱風の魔道具、それに視力に影響を与える閃光弾のような物もよさそうだ。ただ後者は、こちらにも影響がでそうだし対策が必要。 特にパン太達にサングラスみたいな物を付けるわけにもいかない。あとは、先日出来た砂利の飛んでいく物も悪くはなさそうか。
全部用意するのでもいいが、一先ずアドバイスを貰うためにジジイに相談する。
「前に見ておった魔法を仕込んだ武器はどうじゃ?」
「魔道具のように一定の効果が発揮される武器なんてあるんです?」
「当然ある。見た目が違うだけで、基本的なところでは大きくは違わんよ。それに子供が持っとる武器にそんな効果があるとは思われにくいしの」
「魔物や動物相手じゃ意味なさそうだけど。じゃあちょっと待ってて」
タタタっと走り、トゲトゲバットを持って来る。
「これで作ってみようかと」
「先生。そりゃ重かろう。それでも良いが、子供っぽい木刀や棒の様なものとかどうじゃ?」
なるほど。たしかに緊急用なら多少戦えて、尚且つ使い捨てにしやすい物の方がよさそうだ。
発動する効果については、熱風に決まった。閃光系は味方への影響で、現状では却下。砂利は赤熊ぐらいになると、衝撃と多少の痛みではあまり効果がないみたい。同じように風で衝撃を与えるにしても、熱風のような温度変化に対しての方が敏感なんだって。
納得できるような、できないような説明だけどジジイの長年の経験からの言葉なら信用したほうがいい。
試作して、庭で試していたら怒られた。「熱風で植物が死んじゃう」って。あと結構な威力なので、土埃がすごいことになってたししょうがない。でもお散歩禁止だし他に試せる場所ないんだよね。
少し悩んだけど、絶対に自分で確認しないといけないわけじゃない。
ジジイに預けて、後日報告してもらうことにした。
後日の報告結果は「余程の大物でなければ、多少時間を稼げる」だった。
余程の大物って何で試してきたんだろう……。
まあ、今のところ僕の行動範囲なら問題ないってことかな。
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