第4話 もうすぐ三歳

 異世界に転生してもうすぐ三年になる。


 身体能力の方は、トテトテと走り回れるくらいに成長した。

 魔力は、比較対象がないのでわからない。トレーニングは、ちゃんと続けている。  

 当然、漏らしてはいない。トイレにだって一人でいけるのだ。

 

 食事も家族と似たような物になった。食べやすく加工してくれているので、母さんの優しさを感じる。

 父さんのおかげで肉は豊富にあるし、食生活は充実している。

 野菜は、畑もあるけど町や近所で手に入れて来る方が多い。

 近所と言っても結構遠いけど……。

 母さんが僕にあまり手を掛けなくてよくなったので、今後は畑での収穫量も増えそうだ。



 それから、少し会話ができるようになった。

 いきなり『父、母』と呼ぶのもおかしいかと思い、『とーちゃ、かあちゃ、にぃに』と呼んでいる。

 兄さんは、五歳年上なのであまり参考にならない。とりあえず真似してると思われればいい。


 会話が出来るようになったので、以前に比べると格段に情報を得ることが出来るようになった。

「かあちゃ、お山、おっきい」

「そうねー。こわーい魔物がたくさんいるから一人で行かないようにするのよ」

「お山、穴ぼこ、いっぱい」

「あれは、鉱山調査の跡ね。ってまだわからないかな。昔に、町の人達が穴掘りしたの」

 さすがに二人目だからか、母さんの教え方は上手かった。最初ので理解出来ちゃってるんだけどね。


 近くの町は、元々鉱山調査の拠点だったものが発展したらしい。家の近くが発展していないことを考えると、調査結果は芳しくなかったようだ。

 それが、五十年ほど前。母さんも生まれていなかったので、祖父母から聞いた話なのだとか。母さんの年齢を考えると、祖父母もその親から聞いたのかもしれないが。

 その後、土地を与えられた子爵様がうまく発展させ、町として機能している。

 幸い山や森に魔物が多く、その素材で稼げているらしい。

 我が家や近所は、元狩人小屋ってことになる。

 現在の狩人小屋は、もう少し山や森に入った場所に移ったようだ。



 町には未だに行ったことが無い。

 もうすぐ『スキル告知の儀式』で行くことになるので、楽しみだ。

 自分のスキルが何なのか知ることも楽しみでもあるのだが、怖くもある。

 別に英雄願望があるわけではないけれど、それなりの生活が出来るようにはなりたい。

 残業が多く体調を崩し退職したが、元エンジニアだったので理想を言えば『ものづくり』系のスキルだとうれしい。

 働き出して確信したが、やはり接客業は向いていなかった。

 知り合いの紹介だったとはいえ、やめるべきだった気がする。

 結局、事故にもあってしまったわけだし……。



 少し気分が落ち込んできたので、二歳の誕生日に兄さんからもらった、天井からぶら下がるとんぼの羽を見ながらお昼寝することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る