第5話 スキル告知の儀

 ガラガラとうるさい荷車に、荷物と一緒に乗せられて町に向かっている。

 ゆっくり進んでくれているようだが、時々石に乗り上げて跳ねるのでお尻が痛い。

 早朝に出発したので、少々眠いのだが寝る余裕はない。

 今回は、父さんと僕の二人だ。母さんと兄さんは、お留守番。


 町の近くまで下って来た。

 特に何事もなく、手前の大きな川に到着。向こう岸に、城壁が見える。

 近づいてみると、思っていたより町は大きいのかもしれない。

 キョロキョロとしていると、橋を渡り切ってしまった。

 出入りを監視している兵士がいるのだが、暇そうだ。こっち田舎側だもんね。


「ミグマさんか。後ろの息子さんかい?」

「おう。今年、三歳になるんでな」

「そっかそっか。坊主、良いスキルだといいな!まぁ、この後が大変なんだけど。うっし、通ってよし!」


 父さんより少し年上だろう。中年の男性兵士は、こちらの顔を確認しすぐに通してくれた。もう一人の兵士は、手を振ってくれた。小さく振り返しておく。

 二人とも父さんと顔なじみなのだろう。


 城門を抜けると、片側は広場になっていた。馬やトカゲのような騎乗用の動物がいる。もちろん少ないが馬車もあった。

 そのまままっすぐ目的に向けて、中心へと向かう。


 城門近くは人通りがあまりなかったが、中心付近まで来ると平日の田舎のショッピングモールくらいには人がいた。

 一番に目を引いたのは、やはり獣人だ。

 立って歩く動物タイプに、人間に耳や尻尾の生えたコスプレっぽいタイプもいる。

 どちらが先なのか、最初から両タイプとも存在したのか。それとも過去にケモナーさんがやらかして後者が生まれたのか。少しだけ気になる。

 エルフっぽい耳が長くて、華奢で洋風な顔も見受けられる。他にも、大小さまざまな種族がいるようだが、不思議とドワーフっぽい人は見かけない。想像している容姿と違うのだろうか。


 お店よりも町の人々に目を奪われているうちに、目的地に到着した。

「よーし。神殿に着いたぞ」

 教会かと勝手に想像していたが、神殿でスキル告知の儀を行うらしい。

 外観は、小さ目の博物館のような感じでしっかりとした建物。

 荷車を脇の広場に預け、父さんと一緒に中に入っていく。

 大きな扉の先は、典型的な教会のような造りになっていた。正面に向かって、左右に長椅子がある感じ。

 正面の台の上に、微笑む女神様の像。足元には、大きな犬の像が寝そべっている。使い魔とかなのだろうか。

「とーちゃ。わんわん」

「そうだな」

 父さんの反応は薄い。獣人の神とかそういった特別な存在ではないのだろうか?


 何名かお祈りをしている。

 儀式は別室で行われるようで、軽くお祈りをして別室に向かった。

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