第6話 スキル告知の儀2

 受付のような場所で要件を伝え、別室に案内される。

 六畳くらいの部屋に、テーブルと椅子が左右に二脚ずつ。合計四脚。

 片側に腰かけて待つ。僕は、父さんの膝の上だ。

「しばらくお待ちください」

 そう言うと、案内係の人は部屋を出て行った。


 数分経ったくらいで足音が聞こえ、ノックの後に細身の男性が入室してきた。

 手に持っていた道具をテーブルに置き、向かいに座るとすぐに話し始めた。

「お久しぶりです。早速ですが儀式を始める前に、お子様に向け大切なお話をさせて頂きます。我々は、阿漕な『アクース教』とは違い無償でこの儀式を行っております。今から遡ることおよそ二百年。当時の王である『賢王ドゥエーレ様』による『全ての民にスキル活用の入り口に立つ権利を』と言うありがたいお言葉より続いている由緒正しい儀式となっております」

 慣れた様子で、ペラペラと早口で説明していく細身の男性。普通の三歳では、理解できないだろうと思いながら聞く。


 まだ続いているのだが、要するに『費用は国側の負担なので有難く思いなさい。そして、国の役に立つように』ってことだね。どうやらこの方は、役人さんのようだ。

 同じ図形が出ても、出来ることが違ったりするらしい。


 ありがたくも長いお話が終わり、いよいよ儀式が行われる。

 入室の際に運ばれてきた、テーブルの上の板状の道具。石板かな。

 この石板の表面を、一緒に置いてある砂っぽい物を手に付けて撫でると、図形が浮かび上がるらしい。

 血を付着させるとか痛そうな作業でもないので、素直に指示にしたがいペタペタと砂を付け、石板をスリスリと撫でる。

 十秒ほど行い手を離すと『造』という漢字が浮かび上がっていた。

「少々珍しいですね。調べますのでお待ちを」

 そう言うと、役人さんは図鑑のようなもので調べ始めた。

(図形って、これ漢字だよな。『造』って希望通り生産系かな。だったらうれしいけど)


 調べ終わったのか、役人さんが図鑑を閉じる。

「どうやら過去の結果から、技術系のスキルと思われます。しかしながら、戦闘系のスキルでなくとも諦めてはなりませんよ。過去にはこういった技術系のスキルと思われる図形からも、最前線に立ち魔物や他国から民を守り英雄となった方たちもおります!それに、国を守るための武具や薬品、道具などを作成し勲章を得るのもよいですね」

 未だにこの世界の価値観がわからないが、戦闘系のスキルの方が人気なのだろうか?慰めるように、また長そうな話が始まってしまった。



 僕ら親子が解放されたのは、それから十分後だった。

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