第70話 ダーツ大会

 そういえば、ダーツ大会は祖父が開催すると思って任せっきりにしていたのだが、未だに開催されていない。色々あったし、しょうがない。

 しかしそのせいもあるのか、我が家では若干ブームの去った感がある。

 そんな中「ダーツ大会はまだか?」と、父さんに言われてしまった。

 祖父に言えばいいのに、僕に言ってくる。

 隣に住むようになったのに、関係は以前と変わらずお互いに避けている感じ。

 最近影の薄かった父さんからの希望ということで、ちょっとがんばってみる。


 祖父の元へ行き、売り上げアップのために町での開催を提案。

 その前に「我が家で試験的に行う必要があるだろう」と伝える。

 若干渋っている所を見ると、僕が自主的に来たのではないことはわかっていそうだ。広めたけど、自分じゃほとんどやってなかったしね。

 それでも、とりあえずは開催することになった。

 賞品は用意出来ていないので、今回はお金。大銀貨一枚。一万円だね。


 全員参加ということで、予選を行い上位三名で決勝とした。

 

 勝ち残ったのは、父さんと、職人のクレア、最後に屋敷の執事カーティス。

 祖父に向かって、流し目で勝ち誇った表情の父さん。父親相手に(お前、そういうとこだぞ!)と思ってもしまったが、きっと許されると思う。

 二人は孫の僕を挟んでも仲良くなれないのだから、今後もずっとこんな関係なのだろう。


 結局、父さんが優勝した。

 そりゃそうだよね。元々優秀な現役狩人の上に、ずっと地道にトレーニングしてきたんだもん。

 母さんも喜んでいる。良かったね。

 賞金は、記念メダル風に箱を作って渡したので、部屋に飾っておくらしい。

 ニヤニヤしながら眺めて、母さんに呆れられないといいけど。


 祖父は相当悔しかったようで「何か新しい物はないか?」と僕に聞いてきた。

 確かに祖父の立場なら、父さんのあの流し目はさまになっている分余計に腹が立つのは理解できる。

 祖父の方が得意そうな物を考えてあげたい。



 少し考えてみた「お金を題材にしたボードゲームがあったな」と、記憶の中から引っ張り出してきたが、設定をしっかりと覚えていない。適当では、ゲームとして成り立つのか怪しいので却下。

 かといって、縦横九マスずつの数字を埋めていく物もピンとこない。「俺のターン!」ってやつも、同じ絵柄のカードを揃えるって「どんだけ時間かかんねん!

」てことになるだろう。木版を作れば無理ではないけれど『決闘』したことがないのでカード効果とかが少ししかわからない。

 こんな時に、兄さんが居てくれれば元世界の知識の共有ということで助かったのだろうけど、まだしばらく戻りそうにない。「祖父の得意そうな物」という縛りが、こんなに難しいとは思ってもみなかった。


 そういえば、祖父のスキルって何なのだろう。

 聞いたような聞いてないような……。記憶にないので、きっと聞いていないのだろう。

 参考にしようと、聞きに行く。

「バウ。これは秘密だが『気』というスキルだ。力が強くなる。このスキルのおかげで行商として成功することができた。族相手でも戦えるしな」

 商人なので、すっかりそっち方面のスキルかと思っていたが違ったようだ。所謂身体強化みたいなものみたい。最近、自分のスキルの難解さで悩んだため、わかりやすくて少しうらやましい。


 結局あまり参考にならなかった。

 身体強化であれば、肉体を使う物でも良いのかもしれないが、年齢的に激しい物は避けた方が良いだろう。(これくらいなら大丈夫かな)ってことで、綱引きと縄跳びを広めてみた。

 期待していなかったが、これまた意外にヒット。

 短めの綱引きは、力も必要だが押し相撲のような駆け引きも大切で、祖父の得意種目となった。父さんは勝てずに悔しがっている。

 ついでに縄跳び。これは、トレーニングにも使えるので警備のアルロさん達は積極的にやってくれた。「痩せるのにも使える」という話をしても、元世界の女性たち程女性陣が反応しないのは、世界間ギャップだろう。家の人達みんな必要なさそうなのもあるかな。



 後日町で商会が主導して、ダーツ大会が開かれ大いに盛り上がった。

 何故かその場で縄跳びも紹介され、人気が出たのだが僕の儲けにはならなかった。

 所得の少ない縄を作っている人たちや、孤児院の貴重な収入となったらしく商会は感謝されたらしい。


 そういえば、随分とお祈りに行っていない。

 十歳になったら行こうかな。

 名前はたしか『エリード』様だっけ。

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