第71話 ブロック建材

 町でデバン様に金属類の報告を行い、負金属の追加をお願いしたりした。

 思っていたより高かった。それでも買うんですけどね。



 その後、負金属の量を増やして例の土属性の発動体を作ってみたが、思い通りの結果を出すことができ喜んだ。

 量を増やせばその分効果が上がったのだが、蟻側の素材の問題か上限が存在した。僕とジジイが使うと、一辺三十センチ程の立方体が作れるくらい。僕自身はやっていなかったが、人気ゲームを思い出し笑った。

 ただこれ魔力操作が重要みたいで、他の人達では接地面が数センチ変化するのみだった。


 出来上がったブロックの耐久性を確認すると、硬さは十分に建材として利用可能だった。経年劣化に関してはすぐに調べることは出来ないので、念のため表面の塗装はした方が良いだろう。売り込む時にも、そう伝えたいと思う。

 重さもほとんど変わらない。というか持ったくらいでは変化を感じられない。

 売れなかったとしても、自分で使っていこうと思う。何故か水も通さないし。


 サンプルとして一般的なレンガサイズの物を作り、デバン様に届けてもらった。小さめにした理由は、先日学んだ「報告は控えめに」だ。

 

 数日後、連絡が来た。「この建材を作る発動体もしくは、魔道具が欲しいので話がしたい」ということだった。

 うーむ。これ今までの物と違い、売ってしまうと自分達がレンガで稼げなくなるんだよね。正直断りたいわけだけど、相手は住んでいる地域の子爵家なわけで。祖父やカーティスさん達と一緒に対応に悩む。

 ただ「話をしたい」なので、単純に取り上げるということでは無さそう。

 結局「交渉の余地はあるかもしれないが、従うしかないよね」ということになった。



 相手方の予定を確認したところ「翌日の来訪を許可する」ということだったので、返事をもらった翌日に伺うことになった。


 今回も交渉相手は、デバン様のようだ。

 前回と違うのは、本館の応接室に通された事。緊張する。


「来てくれたこと、嬉しく思うよ。早速だが、話を進めたいと思う。サンプルは父とも確認したが、まずは例の物について簡単に説明をしてくれ」

 前回より、少し硬い印象を受ける。僕の気持ちの問題だろうか。

 席に着く際、僕の存在を横目で確認されたことで少々不安になっている。


 説明を求められたので、祖父が説明する。内容については事前に打ち合わせ済みなので、余程の事がないかぎりは僕は見ているだけだ。

 負金属を用いた物で、効果としては見て頂いた通り建材を作成できるということと、発動体では使い手によって差が大きいこと。魔道具では試していないので、結果はわからないことを伝えた。

 ちなみに、今回現物は持ってきていないので実演は出来ない。

 デバン様は「そうか」と言い、使用人に指示をだして紙を受け取り、少し何かを書くと使用人に渡した。前回も居た方。たぶん執事さんだね。

 その執事さんが、こちらに紙を持ってきて見せてくれた。


「取引の条件について書いてある。希望があれば執事に伝えてくれ。私は少し外す。後ほど確認するよ」

 そう言って、応接室から出て行った。


 気を緩めたいところだけど、執事さんもいるし他にも使用人さんがいる。真面目そうな振りをして、祖父の見ている紙を覗き込む。

 ふーん。買取希望額が、大金貨百枚か。

 ん? 大金貨百枚⁉ じゅ、十億円⁉


 ふー。少し落ち着こう。庶民は、一定額超えると焦ってしまう。

 今後ブロック建材を販売した場合の利益を考えると、少ないくらいかもしれない。

 祖父の顔を見ると、目が合った。

 金額の部分を指し、トントンと叩いて唸った。

 これ事前の打ち合わせで決めていたサインの一つ。これは「もう少し良い条件を引き出したい」という合図だ。

 僕の答えは「左に首を傾げる」だ。「イエス」のサイン。

 そんな感じでいくつか気になる点を見つけ、執事さんに伝えた。

 


 デバン様が戻ってきて、内容を確認された。

 仮契約として、作成に必要な負金属は子爵家が用意すること。買取金額は、一つ大金貨百枚。ブロック建材については、ヘイル商会への販売許可と十年間子爵家では市場に流さないこと。子爵家負担で魔道具も作成し、その結果を見て発動体か魔道具か選択するということになった。

 こちらとしては、まずまずの内容ではないだろうか。


 必要な負金属の量を受け取り、領主家を後にする。

 帰り道で祖父と話をしたが、建材の輸送費を考えると大金貨百枚でも安すぎるくらいのようだ。鉱山関係のみならず他にも利用できるので、十年だけで考えても子爵家は元が取れそうだ。

 

 とにかく、悪い話にはならなくて良かったと思う。

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