第28話 パン太のお相手

 翌日、起床。

 祖父母も朝が早い。まだ寝てるのは、兄さんくらいだ。

 軽く挨拶をして、キメラのお世話。

 これいつまで僕の役目なんだろうか。

(兄さんは、また出て行くのかな?)なんて考えてたら、次男問題を思い出した。

 とりあえず、祖父母が来て忙しいし、一旦保留にしておく。


 朝食を終えると、父さんは狩りへ。

 兄さんは、今日はゆっくりするみたい。

 祖父母の建てる家だけど、我が家の両サイドは畑と、僕命名の『トカゲ園』で埋まってるんだよね。

 残るのは町に近い表側か、遠い方の裏側。元々町から遠いので、そんなに違いはないけれど、裏側だと道の整備も必要そう。

 離れていいならトカゲ園の向こうも可能かな。

 畑側は、傾斜とかでスペース的にもちょっと厳しい。

 祖父母は結局裏側を選んだ。

 一日かからずに決断って早い。僕ならしばらく悩みそう。

 せっかくがんばった水路も作り直すことになるみたい。ちょっと複雑。まあ、便利になるならいいや。


 昼前に、ロビーニョさんと共に馬車が二台到着。みんなで出迎える。

 昨日会ってない人が三人かな。


 一人目が『ジム』くん。

 僕が言うのもなんだけど、まだ子供。中学生くらいかな? 髪の毛は、若干緑っぽい。真面目そうな印象。

 二人目が『アードム』さん。

 すごい! ドワーフだ! 僕を手伝ってくれる職人さんなんだって。

 ずんぐりむっくりで、赤っぽい茶色の髪。ついでに無口。

 ちょっと足が悪いんだって。気を付けてあげなくちゃ。

 三人目が『シエンナ』さん。

 母さんに縋り付いて「お姉ちゃん」と連呼しながら泣いている。

 あー。この人、こうなるので初日いなかったのかな。

 容姿は、オレンジっぽい色の髪でスタイルは良さそう。二十歳くらいかな。

 母さんが妹みたいに可愛がってた使用人の子なんだとか。なるほどね。

 泣き止むと「お嬢様。失礼しました」って言ってた。

 

 次に、さっきからパン太が気にしている二台目の荷馬車へ。

 中を覗くと、いた!

 檻の中に白い豹。雪豹っぽい。

 パン太より少し小さいかな。尻尾が太い子。

「従魔屋で見つけたんだ。珍しいし綺麗な模様みたいだけど、怪我をして綺麗な毛皮を剥ぐのが難しいのが幸いしたね」

「えっ⁉ 怪我してるの?」

「ネコ科の魔物の素材と混ぜて治してる。まだ調子良くなさそうだけど」

「よかったー。だから大人しいんだね。それで、高かった?」

「ちょっと高かったけど、祖父母に事情を話して買ってもらった」

「そっか。あとでお礼言わなくちゃ。兄さんもありがとう! そうだ、魔物と混ぜたから、魔物になっちゃう?」

「いや。元々魔物。前の主人がテイマーで、死んじゃったらしい。この子は生き残りだってさ」

「僕、テイマーじゃないけど大丈夫かな?」

「バウ君なら大丈夫じゃないかな? しらんけど」


 なんか二匹が見つめあって「グルル」って鳴いてる。

 片方は檻の中だし、今のうちに祖父母にお礼を言いに行く。

「じいちゃん、ばあちゃん。あの子のお金出してくれてありがとうございます。お金を稼いだらちゃんと返します」

 ぺこぺこと頭を下げる。

「何を言ってる。じいちゃんを舐めちゃいかん。あれは、孫へのプレゼントの一つだ。他にも用意してるからな!」

 さすが本物のお金持ちは違う。金あるアピールも、嫌みがない。

「あら。あの子の費用は、私が出したはずですよ。あなたは、他の物でしょう?」

「ぐ、ぐぬっ……」

 じいちゃん、かっこいいと思ったのに……。

 それにしたって、二人のおかげだし感謝しないとね。



 白い子が心配だったので、馬車に戻る。

 動かすのも落ち着かないかもしれないので、ここでパン太と見守る。

 早く体調が良くなって、本当の意味で家族になれるといいな。

 名前は、何がいいだろう。

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