第29話 この名前でいい?

 僕が馬車にいると、オスカーさんが近くで立っていてくれた。お疲れ様です。

 白い子は、警戒して気配を探りながらだろうけど、寝るみたい。

 調子悪いから、眠くなりやすいのかな。


 そういえば、昼食まだだった。

 みんなが家に移動してから結構時間が経ったし、気になるけど一旦戻ろうかな。

 オスカーさんに申し訳ないからね。

 パン太にここは任せて、あとでご飯を持って来よう。


 家に戻ると、みんなは食べた後だった。

 僕とオスカーさんも昼食。

 終わると、お肉を貰ってパン太達の元へ。

 目の前で、パン太に半分あげて食べる所をみせつつ、白い子の傍に置く。

 匂いを嗅ぎはするけど、すぐには食べない。

 ここに来るまでもそうだったみたいだし、そのうち食べてくれると信じてまた家に戻る。

 

 戻ると、今日はフランクさん達もお風呂に入ってから町に戻るらしくて、利用許可を求めてきた。別に、自由にしたらいいと思うんだけどな。

 説明がてら水汲みに行こうとしたら、止められた。

 ジム君とフランクさんのお仕事なんだって。

「バウ様」って呼ばれてビックリ。なんだか落ち着かないので、変えてもらう。

「若坊ちゃま」から最終的に「若様わかさま」ってことになった。若い方の坊ちゃまだからだって。もう何でもいいや。

 たぶん、慣れるまで呼ばれても気づかないことになりそう。

 兄さんは「坊ちゃま」だ。笑っちゃう。

 祖父が「大旦那様」で、伯父さんである『ジェームズ』さんが「旦那様」と呼ばれているんだって。

 祖母が「大奥様」なのはわかるんだけど、母さんはずっと「お嬢様」なんだとか。ちょっと不思議というか、商会所属って立場がややこしくさせてるんだね。

 とにかく僕は、嫌われて「若様わかさま」が「ばかさま」にならないといいな。


 フランクさんとロビーニョさんは、また町に戻っていった。

 大工さんの手配とか、いろいろあるらしい。

 今日新たに来た三人は、残るのか。

 シエンナさんは、母さんと祖母の女子部屋に。

 ジム君は、アードムさんと食堂。

 オスカーさんは、僕の部屋。

 父さんは、しばらく倉庫の住人だね。



 大人数での夕食。

 シエンナさんやジム君は、真面目なので一緒に食事をしようとしなかったけど、落ち着かないから一緒に食べてもらった。

 夕食の後に、お土産を貰った。

『発動体と魔道具作成中級』の本と、いくつかの発動体に魔道具。

 素材は「欲しい物が出来たら相談してほしい」と言われた。感謝感謝。


 寝る前に、パン太達を見に行く。

 ちゃんと食事はした様で、安心。

 起きてたので夜食もあげると、今度はわりとすぐ食べてくれた。

 食べ終わりに、考えておいた名前を伝える。

「君の名前『リリー』ってどうだろ。この名前でいい?」

 当然反応は無い。

 しばらく見つめ合った後、パン太を軽く撫でてから「おやすみ」を告げ、帰る。



 みんなにも寝る前の挨拶をして、オスカーさんと部屋に行く。

 明かりを消そうかなって時に、シエンナさんの悲鳴!

 走って声の方に向かうと、みんながガレージにいた。

 そういえば『ハタノ』と『ネトリ』の紹介をしてなかった。

 使用人さんて、寝る前の見回りするんだね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る