第30話 大人の男

 今日は、いつもより早起きしてパン太達を見に行く。

 パン太が夜中に狩りに行ったのか、馬車の中が獲物の血とかで汚れていた。

 リリーの周りも汚れてるし、分けてあげたのかな。

 そういえば、レバーって貧血の時食べるといいとか聞いたことがある。

 本能的に理解して、狩って来たのかも。

 ずっと弟みたいな気でいたけど、もうすっかり大人の男だったみたい。

 僕も、明日で八歳。パン太に負けないようにしよう。



 リリーが来てから数日が経った。

 体調も良くなってきたのか、食事量も増えてきている。

 すでに檻から出していて、使ってた毛布と一緒に僕の部屋に移動済み。

 最初「危ない」と止められたけど、兄さんの「大丈夫」でなんとかなった。

 それでも、オスカーさんが常に護衛に付くことが条件だけど。

 なんとなくみんな兄さんを『テイマー』みたいな感じでみてるけど、その人違うからね。僕は、それで助かったけど。


 リリーは、時々庭に出て行ってしばらくすると戻って来る。おトイレだろう。

 手を差し出して匂いを嗅いでもらう挨拶は済ませてあるので、後は時間が解決してくれるだろう。

 向こうが寄ってくるようになったら、撫でてみようと思う。



 大工さんが祖父母の家を作り始めるまでに、十日以上かかった。それでも、早いのだけどね。

 アルトピから馴染みの職人達を呼んだとか。

 あと、間取りを考えるのに時間がかかったのもあるみたい。

 大きな建物だと、バランスとかの問題もあるし、想定してたものから変更もあるだろう。


 毎日一緒に過ごして、せっせとご飯をあげていた甲斐もあって、随分とリリーとの距離は縮まった。

 リリーの態度に家族も安心したようで、護衛なしでも大丈夫ということになった。

 元々従魔だったことや、魔物で賢くもある為か、すでに序列というか人間関係を理解してる節がある。


 まず僕に対してだが、傍に寄って来るようになったので、頼る相手であり主人だと思ってくれていそう。

 パン太は、相棒かな? 舐め合いしてるので、最低でも仲間という認識はあるっぽい。仲は悪くなさそうで、ひとまず安心。パン太は、うまくやったと思う。

 あとは、母さんと祖母がここのトップだと知っているのだろう、触っても平気。

 ご飯の用意してくれるから、その匂いとかも関係するのかな。だとすると、シエンナさんも大丈夫そうだけど、彼女自身が怖がって近づかないからわからないまま。

 他の人は、まだかなり警戒する。

 昔飼っていた雌猫は、男性の方が好きだったけど猫と豹は違うのかな。

 祖父は立場的には上なのに、リリー的にはいまいちの様子。

 もしかすると、前の主人であるテイマーさんの性別も関係あるのかも。男性か女性か知らないけどね。


 

 そういえば、そろそろ兄さんはまた旅にでるんだって。

 祖父がロビーニョさんを専属として雇って、兄さんに付けることにしたので安心だ。

 オータロウの子供達は、成長したら祖父の商会で護衛する予定となった。

 一度、兄さんがオータロウ達と狩りするのを見て決めたのだとか。

 そのうち護衛の人や従業員が来て、トカゲ園で訓練するらしい。

 食事の世話とか祖父関係に移ったのは楽になっていいけど、家の隣が訓練場ってどうなんだろう。

 

 僕もそろそろ動き出さなくちゃ。

 まずは、アードムさんと協力して魔道具作りだ。

 一個いくらで売れるのかな。

 リリーの件もあるし、儲かってくれると嬉しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る