第27話 祖父母2

 父さんが帰って来ちゃって、食堂に入って来るなり祖父が殴りかかった。

 わーお。痛そう。

 父さんは、左頬を殴られたあと真っ直ぐ祖父を見つめた後、頭を下げた。

「貴様! この十五年わしら夫婦がどんな気持ちだったか!」

「あなた。十四年です」

「じゅ、十四年! どんな気持ちだったか! どの面下げて戻ってきおったか!」


(そりゃ、自宅だもん。戻ってくるでしょ)って思いながらやり取りを見守る。


 怒鳴り続ける祖父に、黙って頭を下げたままの父さん。

 黙っていられると、怒りの熱量って次第に下がりますよね。わかります。

「なぜよけなかった! それが気に入らん!」

 今度は別方向に怒り始める。ちょっと理不尽。


 しばらくして、怒り続けるのに疲れたのか「一先ず、そこに座れ!」という祖父の言葉で、とりあえず場が落ち着く。

「殺してやりたいところだが、孫達に感謝しろ!」

 結局父さんは、黙って頭を下げるのみ。

 まあこうするしかないし、こうなるよねって感じだ。

 僕が祖父の立場でも、子供がいるのに目の前で殺すって無理だし、それが孫ってなると更に無理だ。

 父さんの立場で「すみませんでした」って言うのも、いいような悪いようなって感じなので、これが正解なのかな。


 

 その後、祖父が父さんに要求を突きつける。

「孫がいるんだ、わしらもここに住むぞ」

「あなた。引継ぎ等ですぐには無理でしょう?」

「わかってる」

「戻る時は、あなた一人でいいわよね」

「なに⁉ それはずるくないか?」

「何か問題がありますの?」

「いや……。でもな……」

 祖母の方が強いのかな。

 脱線してるので、話の流れを修正する。

「じいちゃん、お部屋足りないよ」

「おーそうだったそうだった。バウは賢いな! 新しく建てる!」

 鉱山関係で、大工さんが足りない話をしたけど、マネーパワーでどうにでもなるってさ。お金ってすごい。


 一先ず、敷地内の案内。

 歩きながら祖父が話しかけて来る。

「バウの作った道具。暖かくなるのと、光るやつ。あれは、売れる。じいちゃんにいっぱい作ってくれるか?」

「いいよ。でもそんなに材料がないかも」

「大丈夫。じいちゃんが用意する。あと、手伝う者も連れて来よう」

 兄さんから僕の話を聞いた時に、魔道具も見ていたようで、こんな話も出た。

 オータロウ一家も紹介。

 祖父は「輸送に……」とかブツブツ言ってた。

 

 他に案内するところもないので戻る。

 今日の部屋割りは、両親の寝室で母さんと祖母。

 片づけておいた兄さんの部屋に、兄さんと祖父。

 食堂に、オスカーさん。

 僕の部屋に、僕とパン太。

 父さんは、物置らしい。ちょっと不憫。一人で、掃除中。

 フランクさんは、ロビーニョさんと一旦町に戻った。

 明日、残りの人を連れてくるんだって。


 

 なんだかんだで日が暮れてきたので夕食のお時間。

 母さんと祖母は、仲良く料理をしていた。よかったね。

 その後食堂でまったりしつつ、順番にお風呂。

 母さんと祖母が一番で、祖父と拉致された僕が二番目。

 家にお風呂があるなんて思っても無くて、祖父母も喜んでくれた。

 その後僕が残り、オスカーさんに使い方の説明。兄さんが最後。

 パン太は、今日は無し。



 今日、パン太は一通り匂いを嗅いでいたけど祖母に興味があるみたい。

 母さんに似てるからかな?

 もしかすると、おいしい物の匂いでもしたのかも。

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