第18話 鉱山開発計画
今日我が家には、珍しく仕立ての良い服を着た人が訪れた。
未だ調査は続いているが、子爵様はすでに見つかった鉱脈を中心として開発するつもりのようで、町と鉱脈の中心付近にあるこの辺りを中継地点とするべく交渉の使者がやってきた。
要するに、前世でいう道路や線路を通すための立ち退き交渉みたいなやつ。
自分の部屋からこっそりと聞いていたが、それほど強制的なものではない。
元々我が家は、借家である。
元狩人小屋だったところを許可を取って住んでいる。
なので、出ていけという話なら素直に出て行くだけなのだが、選択肢として簡易宿泊施設の経営というのもあった。以前より、冒険者に一時的に部屋を貸すなどしていたが、もう少し本格的なものが望まれているようだ。
費用は、融資してくれるみたいだが、両親は断ることにした。
それなりの人数を受け入れるノウハウもないし、何より人手が足りない。
急な話という事で、ある程度のお金が貰えるようだ。
ということで、次に住む場所を探さなければいけなくなった。
候補としては、兄さんの家の近くやオストロイの町など。
兄さんの家は、実家と違って町から鉱脈までのルート上からやや外れているので、今回立ち退きの対象外になっている。ただ家族用に建てられたわけじゃないので、小さい。
町の方は、買い物等便利にはなるがやはり費用がかかる。ついでにいうと、父さんは狩人なので山や森に近い方がよいみたい。
一応、アルトピ方面はどうなのか聞いてみたけどダメだった。どうも両親は、あちら側にあまり良い印象がない。過去になにかあったのだろうか。
それにしても、まだ調査の途中なのに鉱山化するとか大丈夫なのか。
ずいぶんと大胆な決断に思える。見切り発車だったということにならなければよいが。失敗して、領地の財政が悪化すると住民の生活も悪化する可能性だってある。
逆に、現段階で確信をもって進めているのであれば、子爵様はやり手ということになるだろう。だとしたら、その人物に多少興味が出て来る。
別に会ってみたいとかではないが、今後自らの発明に対してどういった行動を起こすか見極めたいというのが本音。便利だなってことで、商品や権利を持っていかれては困る。ただ、今回の立ち退きの対応を見る限り真っ当な考え方の人のようには思える。
会社の上下関係等はあったが、実際の身分制度はどの程度違うのだろうか。
未だに田舎の山で生活しているので、理解できていない。
そんなことを考えながら、生家であるこの場所からの景色を目に焼き付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます