第19話 お引越し準備

 結局、兄さんの家に行くことになった。増築する予定だ。

 兄さんが、近いうちに旅に出ることにしたというのも理由の一つだ。

 ロビーニョさんを案内に雇い、スキルの研究のために、この付近に生息しない生物を探しに行くらしい。

 兄さんは、身長もすでに百七十を超えているし、冒険者として戦闘力も一人前となっている。


 この話の途中で、祖父母の話を初めて聞くこととなった。

 父方の祖父母は、この世にいないらしいのだが、母方の祖父母はアルトピでお店をやっているのだとか。母さんにには、兄がいるので跡継ぎは問題ないらしい。

 実は、父さんと母さん駆け落ちしてこんな山奥に逃げて来ていた。

 なるほど、それはアルトピに近づきたくないわけだ。

 ただ兄さんが旅に出るということで「何かあれば身元を明かし祖父母を頼りなさい」と伝えていた。やっぱり、心配なんだね。



 旅の途中で、パン太のお相手探しもしてくれることになった。

 僕は、貯めてたお小遣いを全て兄さんに預けようとしたが断られた。出世払いということにしてもらおう。

 出来ればかわいい子が良いのだけど、豹の可愛いとはなんだろう。猫の可愛いとか不細工とかはわかるが、案外不細工でもお近づきになっちゃうと可愛くみえてくるんだよね。

 我ながら、相変わらず無駄な思考が多い。


 パン太の希望を聞いてみたいが、残念ながら話せないんだよね。

 でも僕は、話せなくていいと思っている。

 たしかに動物との会話って憧れるし、すごく便利だとも思う。けれど「言葉がわからないからこそ相手のことを考え行動できる」という部分もあるのではないかと。

 だって相手の事で悩む時間て、辛かったり面倒だったりすることもあるけど、幸せでもあったりするしね。

 あとは、言葉が理解できて文句ばかり言われてたら、ずっと優しくしていられる自信が無い。個人的に、相手が理解できてる分には良いけど。


 パン太との関係性を考えていたはずなのに、恋愛を語っているような感じになってしまい思わず苦笑い。

 しかし、これは動物との関わり方であって人間相手では、また違う。

 女性相手はどうだろう。

 転生して、世界も変わってしまった。多少価値観も変わってきているのだろうか。

 年齢的にもまだそんな気分になったこともないので、わからない。

 異世界では、やはり前世よりも結婚が早いみたいだが、僕に至っては少なくともあと十年以上は無縁だろう。十年経ってもまだ十七歳くらいだもんね。



 脇道にそれてしまったが、この際増築では今後の魔道具を想定した造りにしたいと思う。水洗トイレやお風呂を設置する為の排水。それから、自分用に開発のための大部屋。あとは、地下も憧れるし、屋根裏ってのも子供心をくすぐる。

 精神的には、一度大人になっているが、男はいくつになってもってやつだ!

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