第20話 増築と二つ目の作品

 まず、配置を考える。

 最近出番のなかった『えくすかりばー』を使って、ズズズッと地面に線を引いていく。兄さんの旅も長期を予定しているわけでもないため部屋は必要で、そうなると再利用するより残しておいた方が良い。元々兄さんが引っ越した経緯を踏まえ、拡張性を残しておく必要もある。となると裏側に廊下を作り繋げてしまう方がよさそう。兄さんの部屋の真裏に食堂やお風呂。で、両サイドに両親と僕の部屋兼開発室でいいかな。玄関というか入り口は、両親の部屋に近い方。

 自由度がありすぎるのも大変なんだと気づいた。あと、地下と屋根裏はとりあえず保留。

 両親も問題ないってことで、明日にでも町に行って大工さんに依頼することに。来客用の部屋がなくなってしまったが、宿泊施設の話もあったしいいかなってことになった。


 十日ほどで、増築の大部分は終わった。あまりにも早くてビックリ。専門のスキルや魔法を使える人がいるとこんなにも違うんだね。

 今回、鉱山化に伴う転居ってことで優先的に作業してもらえたことも大きい。

 棚やベッドなどの基本的な物の他に、お風呂もお願いしておいた。


 二つ目の作品となったのは『暖かくなる魔道具』で『ホットプレート』と名付けた。というかそのまま。

 これの元になっているのは、発火の発動体。

 僕のスキルによって本来ライター程の火がでる効果が、発熱するのみへと変化した。これの検証を行った結果、火ネズミという魔物の魔石を利用すると、程よい温度で安定することがわかった。

 水の入った壺を上に乗せて放置したが、蒸発することもなく、体感五十度から六十度くらいかな? 触ってアチチッって感じ。

 まだ直接の温度調節なんかは無理だけど、水と混ぜながら入れることでお風呂を利用できるようになった。


 幸い小川が近くなったので、せっせと水を運ぶ。

 湯船が完成したので、レディーファーストということで母さんを呼びに行く。

 母さん一人でお風呂に入ってもらう予定が、最初ってことで説明のために、僕も一緒に入ることになった。裸を見るのは、今更なので恥ずかしさもほとんどない。

「あー気持ちいい! バウくん。良いものを作ったわね! ただ水を沢山使うから、頻繁に利用するのは難しそうね」

「小川が近くなったし、水を引っ張って来るか、そのうち水の沢山出る魔道具作れるようにするよ」

「無理しないようにね。母さんは、たまにでも十分だわ。これに慣れちゃうと困っちゃう」

「あはは。そうかもね。でも、綺麗にしてると病気になりにくいらしいから、たまにはお風呂しようね」

「あとこのホットプレート? スープを温めるのにもいいわね」

「あーそうだね。お風呂のことで頭いっぱいだったかも。また作っておくよ」

「それじゃあ、キッチンとお部屋で二つお願いしちゃおうかな」

「わかったー」


 久しぶりの入浴を母さんと一緒に楽しみ、後に控える父さんと兄さんと交代する。

 身体を洗って自分たちの汚れにビックリしたんだろう、二人の大きな声が聞こえてきた。

 入浴後に食堂に集まってみると、みんな髪が綺麗になっていた。一番変化があったのが父さんで、それを見て残りの三人は笑ってしまった。

 笑われながらも、母さんの髪を褒めていたあたりはさすが父さんだ。僕と兄さんじゃすぐにこうはいかない。



 最後に、パン太を洗うことにした。

 湯船を前足でツンツンしている。もうすでに、ぬるま湯くらいなので平気だろう。

 嫌がるかとも思ったけど、お湯をかけても意外に平気そう。

 手櫛でカキカキゴシゴシしながら洗うと、気持ちよさそうにしている。

 地面でゴロゴロするからかすごい汚れで、僕はまたお風呂に入らなければいけなくなった。

 ぬるま湯なので、風邪をひかないように気を付けようと思う。

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