第21話 キメラさんたち
旅に出る前にってことで、兄さんから倉庫の中の素材を譲り受けることとなった。
倉庫の中は、処分することになった失敗作のキメラの素材も置いてあり、気味が悪い環境となっている。この辺りは、出て行く前にどうにかしてもらうことにした。
最初のキメラである羽の生えたカエルは、木箱に苔を敷いた水槽みたいなのに入れられていた。名前を『ハタノ』と名付けられて、未だに飛べないが飼育されている。名前は、羽があって田んぼや野原にいそうだかららしい。
あとは、ネズミと混ぜられちゃった鳥。中途半端に、ミミズクっぽさがあり反応に困る。名前は『ネトリ』で、これまたツッコミを入れるべきか悩む。そのままと言えば、そのままなんだよな。
旅に出ている間に、お世話をお願いされた。餌は、その辺にいる虫を捕まえて与えればいいとか。ネトリは、お散歩も必要だけど窓開けて放置でいいみたい。
一応、見せられない系のキメラもいるらしいんだけど、それはさすがに目につかないところにいるし放置で大丈夫なんだって。本当に大丈夫かな?
「バウくんさー、パン太が空を飛べたらいいと思わない?」
「いや。パン太は、あれでいいの」
「そう? グリフォンとか憧れない?」
「グリフォンは憧れるけど、それがパン太である必要はないね。それにグリフォンてライオンの身体じゃないっけ?」
「そうだねライオン。そっかそっか、残念。君たち兄弟みたいに育ってきたし当然か」
「兄さんは、グリフォン欲しいの?」
「そうだね。俺が乗って移動できることが条件だから、グリフォンである必要もないけど。あとやっぱり、自作がいいな」
こういう話をする時の兄さんは、少し目が怖い。ニコニコしてて笑ってるけど、笑ってないみたいな……。
「こっちの素材は、全部使っちゃっていいやつ?」
「かまわないよ。我が部隊も増えてきたから、それなりに稼げてるし」
現在ガレージには、オータロウからオーシロウまで四体のオオトカゲがいる。ぱっと見だと判別が難しいので、角の本数で見た目に違いを出しているようだ。
「あの角で攻撃出来るの?」
「一応ね。意図せず当たる感じ。とりあえず付けてみたけど、意外と役に立ってるよ」
こうやって自分の部隊を持つメリットを聞くと、羨ましく思う反面愛着を持つと戦わせることに躊躇してしまいそうな自分がいる。
怪我してるのを見るのが辛そうだし、それなら自分で戦って傷つく方が楽でいい。
ただ、戦うことに喜びを感じる種類もいるだろうし、テイマーさんとかを否定するつもりもない。
まあ僕は、ものづくりしたいだけなので、積極的に戦闘するつもりもないけれど。
パン太も時々狩りをするけれど、これは自主的にやってるし気にしない。
なるべく怪我をしないで欲しいとは思う。
基本ゴロゴロスヤスヤのただの猫みたいで、あまり心配する必要がないのがパン太の良いところだ。
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