第22話 旅立ちと三作目
ついに兄さんが旅に出る日となった。
「ミグマ。気を付けるんだぞ」
「何か困ったことがあれば、手紙を持って祖父母を訪ねなさい」
両親は、餞別としてお金の入った巾着袋とアルトピの簡易的な地図、そして祖父母へ宛てた手紙を渡していた。
(自由に使えるお金って考えると、最近では兄さんの方がお金をもってそうな気がするけど)なんて考えながら、その光景を眺めていた。
僕からは、ポタ水に小型版ホットプレート、それから三作目となる『光る角』を手渡した。
兄さんの倉庫にあった光る虫の素材で作った魔道具だ。
僕は、内部は作れても、外部である『ガワ』は作れないので、兎の角の内側を削り内部に納めることで完成させた。
懐中電灯を想像して作成したのだが、残念ながら見た目が「アイスクリームのコーン部分を持った人」みたいな、なんとも間抜けな感じになってしまった。
しかしながら、角を通すことでやや赤みを帯びたやわらかく優しい光となっていて、そこだけは若干オシャレに仕上がっている。
布などで頭に付けることも可能だが、オススメはしない。なぜなら、白装束で頭に蝋燭を付けた姿を連想させるから……。
「兄さん、パン太のお相手探しよろしくね」
「おっけーおっけー」
大事なことなので、再度お願いしておく。
今回、オータロウ達は置いていくことにしたらしい。
町でロビーニョさんと合流予定だし、彼らオオトカゲたちはいなくても問題ないみたい。
むしろ商人の護衛依頼とか受けるなら邪魔になっちゃうのかな。複数を連れ歩くのは、こういうデメリットもありそうだよね。餌もいっぱい必要になるし。
我が家の警備面が強化されるし、こちらとしてはありがたい。
父さんは、町まで同行する。
母さんと僕とパン太は、ここでお見送り。
僕は平気だけど、母さんは寂しそう。
やっぱり、すぐに会いに行ける距離と、そうでない状況では違うんだろうね。
兄さんが旅立ってから数日が経過した。
キメラの世話と、ついでに兄さんの部屋を定期的に掃除するのを任されている。
兄さんから預かった、オータロウ達に指示を出す為の『指示棒』を手に持って向かう。
ハタノとネトリに捕って来た虫を与え、オータロウたちのいるガレージの掃除へ。
放置しておくと糞が溜まっちゃうんだよね。
普段見えにくい岩の裏を確認すると、窪んだ地面に卵が八つあった。
オータロウという名前から勝手にオスだと思っていたが、まさかメスが含まれている⁉
いやいや、トカゲに詳しくないが、性別が存在しないタイプなのだろうか?
僕は犬や猫などの所謂もふもふ系が好みなので、爬虫類や虫についての知識はほとんどない。
そういえば、ドラゴンもトカゲ系ってことでいいのだろうか。だとすると、性別がない可能性が……。
少しの間、固まってしまったが、まずはこの卵が孵った場合どうすればいいかを考えなくてはならない。
僕は相談する為、慌てて母さんの元へと走った。
母さんは「あらあら、どうしましょ」と言った感じで、それほど慌てていなかった。
こういった部分、見習いたいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます