第23話 田舎の日常

 オータロウ達の卵を見つけてから、二十日ほど経過した。

 兄さんは、そろそろアルトピに到着しているだろうか。


 卵は、順調に成長しているようだ。

 卵が孵るまでって経過観察したことがなかったわけだが、成長するっていうか大きくなることを知らなくてビックリした。だって馴染みのある卵って、鶏の物くらいでしょ。ダチョウの卵が大きいことぐらいは、わかるけど。

 知識もないし、あまりしてやれることもない。

 生まれた後のことは一旦忘れて、元気に生まれてくることを祈るばかりだ。


 キメラ達のお世話を終え、日課の素振り。

 折角トゲトゲにしてもらったバットだが、今のところ使う機会がない。

 良いことでは、あるんだけどね。

 少し休んで、畑づくり。

 耕したり、森の腐葉土を拾ってきたり。

 現在は、父さんも狩りよりこちら優先で動いている。

 

 お昼からは、少々のんびりと。

 小川から水を引くために少しずつ進めている付近で、生き物探し。

 魔物以外は、割と元世界と同じような生物がメインなので、カエルや虫の幼虫なんかもいる。ヤゴっぽいから、これはトンボになるのかな。

 こんなことしてると、元世界の子供の頃を思い出す。

 友達と網を持って、川をさかのぼったりもした。橋の下とか通ると蜘蛛の巣が頭に引っかかったり。突然ヘビが出てきたりね。網で掬って、ポイっと。

 野苺なんかも生っていたので、たまに食べてた。今考えると、衛生面大丈夫かって話だけど……。

 ペットボトルや空き缶が落ちてないこの世界の川は、ずいぶんと綺麗に見える。

 でもたぶん、そのまま飲むとお腹壊すのだろう。

 そういえば、鉱山開発でこの水も汚れなければいいけれど。


 パン太は、少し離れたところで姿勢を低くしている。

 小刻みにお尻が揺れているのは、タイミングを取っているのか、楽しんでいるのか。

 きっと、ネズミかウサギでも見つけたのだろう。

 邪魔しちゃ悪いので、そのまま静観。

(でもこれって結構時間かかったりするんだよな)なんて思っていると、 突然の跳躍!

 逃げられたのか、追いかけていった。

 少ししてウサギを咥えて戻って来た。

 自慢げな表情は、お約束。撫でておく。

 たまに置いて行くけど、多くは自慢したあと自分で食べちゃうんだよね。


 パン太のおやつも終わったので、小川での作業開始。

 こんな時、物語では『土魔法』を使って素早く終えてしまうんだけど、我が家にはそういった発動体や魔道具はない。

 値段が高いのもあるみたいだけど、掘った方が早いって考えみたい。

 転居の関係で、多少お金の余裕はあるみたいだけど、鉱山関係で人を雇うのが少し大変みたい。領主様主導だから、普段の作業より稼げるし人気。


 適当なところでやめて帰宅。

 キメラ達の様子を見てから、疲れたのでお昼寝。


 夕飯の気配に、起床。

 今日は、パンに肉と野菜スープ。

 お米は恋しいけど、元々やや酸っぱいハード系のパンも好みだったし、おいしく頂く。

 ただ、まったく不満がないわけではないので「お金持ちになったら毎日サンドイッチ」くらいの気持ちではいる。飽きるかな?

 具材を変えれば、結構頑張れると思うんだよね。


 食後に、両親とちょっとした談話をして就寝準備。今日は、入浴無しの日。

 パン太とちょっとしたスキンシップをしてから、眠る。

 おやすみなさい。

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