第40話 魔族の魔法と発動体

 一旦素材を探すフリをしようと思ったが、やめた。

 素直に白状する。

「ジイさん、ごめんね。今になって思い出したんだけど、素材切らしててすぐには挑戦できそうにないや」

 しっかりと目を見てから、ペコリと謝る。

「なんじゃと⁉ 何が足らん? はよ、言うてみろ」

「冷たくなるプレートの魔道具に使われてる素材。わかります?」

「スノーゴーレムか。それなら……ほれ、これで作れるな」

 えっ⁉ 今、どこから出した?

 突然のことに驚いていると、ジイさんが肩を叩いて来た。

「すまんすまん。久しぶりに他人の前でやったんで忘れとった。珍しいんじゃったか。人間で使える奴は、ほぼおらんからな。魔族にゃわりとおるんだが『空間魔法』ってやつじゃな」

「初めて見ました……」

「まあ、空間魔法のことはええじゃろ。素材も揃ったし早速やるか」


 僕としては、すごく空間魔法が気になる。あとで詳しく聞こうと思いながら、ジイさんと発動体作りを始める。


 発動体製作では、指輪などの小さなものに加工する必要がある。

 各工房は、基本となる『型』を持っていて、そこに手を加えて完成させるのだとか。

 鍛冶でいう『鋳造』だね。

 ここにはないし、ジイさんも持ってないらしい。

 しかしジイさんは、魔族に伝わる簡易版魔法陣を使うので型は必要ないと言ってる。

 (これ、教えてもらっていいやつなのだろうか……)

 メリットは、刻む魔法陣が通常の物より簡単なことと、自由度が高いこと。

 デメリットは、魔法の制御が難しくなることだとか。

 

 先に練習ということで、素材の余ってる水の発動体を作った。

 僕が使用すると、変わってしまうのでジイさんに試してもらう。

「うむ。よかろう。では、氷の方じゃな」

 合格をもらった。


 次に、氷の方も完成。二属性分なので、余裕を持って大き目の腕輪で作成した。

 すぐにジイさんが試そうとして、失敗する。少し冷たい風を操れるだけのようだ。

「やはりダメじゃったか。坊主、せっかく作ってもらったのにすまんな」

 ジイさんは、落胆している。

「あー。ちょっと待って下さい」

 そう言って発動体を受け取り、魔力を流す。

 抑えめでやったつもりが、氷の大きさはソフトボールくらいになってしまった。

(やった! ついにまともに魔法らしい効果になった!)と興奮しながらもジイさんに発動体を渡し、もう一度試してもらう。


 すると、洗濯機サイズの氷が出来た。

「なんじゃー⁉ どうなっとる? これワシがやったんか⁉」

 ジイさんは、混乱しているのかそこら中に氷を作り始めた。

「ジイさん! ストップ! ストーップ! やめてー!」

 必死に呼びかけると、やっと止まってくれた。

「はははっ! これどうなっとるんじゃ? ワシ、氷の魔法が使えとる! しかも、ちーっとしか魔力消費しとらんぞ!」

「あー。僕のスキルのせいで、魔力流すと発動体や魔道具おかしくなっちゃうんですよね」

「坊主のおかげってことじゃな!」

 頷くと、駆け寄ってきて抱きしめられた。

「やっと! やっとじゃ! 坊主ありがとう!」

 興奮して背中をバンバン叩くので、少々痛いがとてもうれしそうなので我慢する。


 

 いつまで続くのかと思っていると、急に僕から離れ外に走り出した。

 また嬉しくて氷を量産するのかと思ったら、目の前から消えた!

(えっ⁉ まさかの瞬間移動⁉)

 突然すぎて、僕もオスカーさん達も固まってしまった。

 勤務開始日前に、採用者がいなくなったんですが……。

 

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