第39話 種族と魔石

 僕が対応し始めたら、ジイさんも多少落ち着いてきたので、護衛はオスカーさんのみとなった。あと、グレイさんも付いてくる。


 工場に到着したので、改めて話をきくことにした。

 「人間のあんたらにはわからんと思うけど、ワシらみたいな種族だと発動せん魔法ってのがあるんよ」

(ん? ジイさん人間じゃないの⁉)

 まずは最後まで聞こうと、とりあえず頷く。

 オスカーさんは、目つきが若干厳しくなった。

「でな、惚れたエルフの娘に告白したら言われたわけ。『あんたが氷魔法使えるようになったら一緒になってもいい』ってな。あんときは、悔しかったなー。んでな『見てろ使えるようになってやる』ってもんで、必死こいて探したわけよ! ワシでも氷魔法が使えるようになる発動体があるんじゃねーかってな。その後、よーさん(たくさん)手に入れて試したけどやっぱりダメ。じゃあもう、こうなったら自分でやるしかねーってことで、発動体作りを始めたんよ」

(あまり喋らないタイプだと思っていたら、すごい喋ってる……。あと、時々訛りというか方言っぽいの混じってきてるな)

「こうやって他の種族の恰好して入り込んで、余所の国の技術を学び始めて二百年くらい経ってると思うわ。結局無理なんかなーって思っとったらアレ! 坊主の作ったアレで出来た氷は、ワシの知らんやつに思える。そりゃワシでも興奮するって! 久しぶりに僅かでも可能性のありそうなものじゃし」


 なるほど。

 聞いてみると、割とくだらない理由に思えるけど、ジイさんにとっては大切なことみたいね。

「氷に興奮した理由はわかりましたけど、ところでジイさんは人間じゃないなら何なんですか?」

「ん? ワシは魔族」

「魔族……」


 ジイさん曰く『魔族』って言っても様々なタイプがいるらしい。

 それこそ、人間に近い見た目から獣やゴーレムみたいなものまで。

 それじゃあ『魔物』と『魔族』何が違うのかってことだけど、体内の『魔石』が違うんだって。それは、本能的に理解できるのだとか。

 よくわからない。これこそが、僕が『人間』ってことの証明にもなるのか。


「魔石ってのは、生きてるとも言える。第二の生命という者もおるな」

 魔族ってことよりも、こちらの方が衝撃だった。魔石は生きている……。

 完全ではないにしても、記憶があるらしい。

 考え方としては、遺伝子みたいなイメージなのだろうか。難しい。


 よくよく聞いてみると、臓器移植の話と似ていた。好みが変わったり、記憶が移ったりというアレに近い。移植には身体的相性が存在し、同種でないと難しいというのもまるで血液型のようで似ている。

 これは、過去に魔石が破損したゴーレムタイプの魔族に移植したのがきっかけでわかったのだとか。

 身体を失えば結局死亡とされ、魔石のみ残っても意味がないらしい。

 最初、魔石を使用することはある意味『生命を奪う行為』なのかと思ったが、少し違う印象を受けた。


 いろいろと脱線したりもしたが、工場に来た目的は氷の発動体を作るため。

「じゃあ、はじめますか」ってところで思い出した。

 そういえば、素材がないんだった。

 この空気で、言い出しにくいな……。

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