第85話 ゴーレム
午前中の作業を終えようとしているところに、グレイが呼びに来た。
フランクさんが、僕に用があるみたいだ。とりあえず祖父の屋敷に向かう。
最近、オストロイで商店の責任者をしているので会う機会が減っていたわけだけど、何の用だろう。
部屋に入り、お互いに挨拶をして本題へと移る。
「若様。新しい素材を手に入れてまいりました」
「ありがとう。でも、これ何の素材ですか?」
「泥のゴーレムと聞いております」
手渡された容器の中には、粘土のような物が入っていた。
マッドゴーレムってことだよね。イメージとしては、もっとドロドロした感じだったんだけど、生死によって違うのかな。
布に包まれた魔石も貰った。
混ぜたら動かせたりしないだろうか。無理なんだろうな。
「それからこちらも」
木箱に入っていて、さっきより丁寧に扱っているように見える。
「こっちは何ですか?」
「死霊の類とのことです」
「えっ?」
あぶない。普通に開けて触れるところだった。
フランクさんに聞いてみたら、確認しても大丈夫ってことなので木箱の蓋を開ける。
中は、こちらも布に包まれた魔石。
なーんだ、びっくりした。
詳しく聞いてみると、影が実体化する魔物とのこと。パーノポーの方で討伐されたのがこちらに回って来たとか。
なるほど、傷がついたり形が崩れているのは討伐の時の影響なのかな。
それにしても影だって! 少しテンションが上がる。
しかし僕の良くない癖だけど、宗教絡みに死霊とか聞くと「拷問された恨みから」とか連想してしまう。
これ呪われたりしてないよね?
貴重な影関連の素材だけど、ジジイが居ない状況で触るのは怖い。これも後日案件だ。
フランクさんにお礼を言って、別れる。
ありがたかったけど、呪われてそうな魔石どこで保管しよう。
部屋は無理だし、工場とか倉庫に置いておいてだれかが触ってしまうのも怖い。注意してれば大丈夫だと思うんだけど、念には念をだ。
中庭の大木の穴。せっかく掘ったけどあそこパン太たち利用しないし、そこでいいかな。置いてから入れないように塞いでおこう。
穴の奥に木箱のまま置いて、入り口をブロックで塞ぎ土をかけておく。
これで一先ず安心だ。
死霊に影か。
たしか元世界で「シャドーマン」という単語を耳にしたことがある。
あれって、死霊の類なんだろうか。
そもそも、死霊とか幽霊やらの定義がわからない。
個人的には、死霊や幽霊って怖そうなイメージだけど、シャドーマンとなると少しミステリアスな印象を受ける。
曖昧でも問題ないのだろうか。
それから、影の実体化というのも謎。
んー。「影ってなんだろう」って話。
目に見えないものを、認識できる形にするってことならわかりやすい。
ビニール袋に空気入れちゃえば「ほら触れるでしょ。ここにあるよ」ってなるし。
でも、影が勝手に動き始めるってなると、それとはまた違った話だもんね。
単純に「異世界だから魔力で」ってことでいいのかな。それか「呪い」って考え方もあるか。「呪いって何よ」って続いてしまうけど。
考えても自分では答えが出せそうにない。
マッドゴーレムについて考えよう。
この泥がなんらかの形として動くのも不思議現象だ。「泥の内部に配線があって繋がってます」ならなんとなく想像できる。
とすると、手元にある泥は普通の物ではないということだ。
発動体作成時に混ぜて試せば違いがわかるのかな。
でなければ、自然界に魔力かそれに関わるナニカが存在し、特定の条件下で自在に操ることができると……。
『人はそれを魔法と呼ぶ!』
アレ。振り出しに戻ってきてしまった。
とにかく、他の生物とゴーレムが違うというのは間違いない。
きっと魔石自体に特殊な能力が備わっているのだろう。以前のジジイの話から考えて「魔石に記憶がある」となると、そこにスキルがあっても不思議ではないし。
少し、考えすぎて脳が疲れてきたので甘い物を接種しに行こう。
歩きだすと「魔物のゴーレム」と「魔族のゴーレム」の違いについて気になり始め、キリが無いので少しだけ地面に寝ころび空を見上げ声を出す。
頭のリフレッシュだ。
しばらくして起き上がると、心配そうにこっちを見ているアリザちゃんと目が合った。
少しだけ、恥ずかしくなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます