第84話 作業と噂話
塔の基礎部分から作り始めて数日。やっと僕の腰くらいまで到達した。
安全のために、支える一階部分を広くしすぎたかもしれない。
正直、作業がちょっと辛い。
貯水池も同時進行なので、全然作業が進まないのも疲れの原因かも。
ジジイが居てくれると、別れて作業できるので効率が良さそうだけど、今は子供の方に集中してもらうべきだ。あんなに喜んでたんだし。
あれ、そういえば名前聞いてないよな。なんて付けたんだろう。今のところ「名付け親に」とか言われないし決めてあったのかな。
仮にまだで、頼まれても断れるように良い返しを考えておこう。さすがに、数百年分の想いを受け止める名前なんて考えられないよ。
カーマインが汗をぬぐっている。少し疲れていそうなので休憩にしよう。
こまめな休憩を入れた方が、効率が良いって説もあったし。
ぼーっとしながら、水分補給。「高い建造物かー」って声に出しながら周囲を見渡す。
前世界だと、こんな田舎に立ってるのって電波塔の中継局くらいだっけ。
電波塔か。都内だと、東京タワー。
おっと、今だとスカイツリーの方か。
大阪で有名なのは、通天閣……だけどあれ電波塔じゃないんだったかな。
なんだか、懐かしい。
それで思い出したけど、スカイツリーが建設されてる時に「
あれ確か結構古くからある技術ってことらしいけど、取り入れるべきなのだろうか。たしか中心に振り子を付けるイメージだよね。
んー、僕がやろうとすると振れすぎて塔が破壊されそうな気がするな。やめておこう。わからないことをして、事故になると怖い。
そもそも日本じゃないので、それほど地震の心配をする必要もない。
安全対策として、パラシュートなんかも考えたけどサイズがわからない。
それに地震を想定した場合、そんな物使ってる余裕がなさそう。
ムササビの術も頭をよぎったけど、たぶん無理ってのは想像が付く。下から魔道具なんかで風を当てても、布の方が破れて落下するはず。
よし決まった。諦めよう。
いつかだれかが解決してくれるだろう。
休憩を終え、作業を再開しようとしているところにグレイがやってきた。
先日頼んでおいた冒険者による下流方面の調査結果を報告に来たみたいだ。
「若様。冒険者より調査結果が届きました」
「どうだった?」
「多少の増水であれば、問題ないようです」
「そっかー。よかった」
「簡易的な地図も受け取っております」
地図を受け取り確認。この地図わかりにくいな……。
まあでも、どうやら問題になりそうな場所はなさそう。
大丈夫だとは思ってたんだけど、自分の目で確かめたわけじゃないので自信がなかったんだよね。これで安心して作業できる。
ついでに仕入れた情報によると、町では冷たい飲み物を売る店が増えてきたんだとか。それ、製氷機の影響だよね。
庶民でも通えるお店でも使われ出したみたいだ。あと、氷単体でも売りに出されているらしい。さすがにそれは考え付かなかった。商魂たくましいや。
僕なら、アイスクリームやシャーベットにしちゃうもん。
近いうちに、冷たい料理とかも作られ始めるかもね。
それから、パーノポーは第三勢力が優勢みたい。
騎乗生物を用いた機動力が武器なんだとか。なるほどね。一撃離脱だと被害を抑えられそうだし、急襲なんかも得意なのかな。
アクース教はどうしたんだろう。他の地域から介入して、もっと頑張ると思っていたけど、パーノポー諦めちゃったのかな。
ハンブルク含め、周辺国はどうなんだろう。
たぶん当初想定していた状況と違うだろうけど、支援している勢力が負けちゃったらどこかが仕掛けるのだろうか。すでに国同士で話し合いが行われてたりしてね。こわいこわい。
ここのところ、僕は比較的平和な日々を送っていると思うけど、少し離れた場所を見るといろいろ状況は変化していっている。
旅に出ている兄さん、巻き込まれてなければいいけど。
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