第42話 販売開始

 ついに魔道具の販売が開始された。

 祖父の指示で、オストロイに店舗を構えたようだ。

 中古物件だが、割と広いしリフォーム済みなので中は綺麗。

 伯父さんの商会店舗がメインで、その一角が魔道具売り場となった。

 責任者はフランクさんが指名され、忙しそうにしている。


 邪魔にならないように店舗二階で報告を聞いていたが、売り上げは上々。ただ製氷機は、さすがに値段が値段なだけにオストロイ子爵様への納品分一台しか売れていない。みんな興味は持ってくれてるようなので「そのうち売れるだろう」とのこと。あと「小型でいいので安くならないか」という声もあるようなので、そのうち開発してみるのもありだろう。

 予想外に、ホットプレートよりも光る魔道具の方が売れている。魔道具としては手頃な価格なのと、もしかすると鉱山関係での需要もあるのかもしれない。


 初日から順調だったので、販売の方はお任せして開発に力をいれる。

 開発と言っても、自分用の趣味の方だが。

 エルフ女性との生活も落ち着いたのか、ジイさんはちゃんと毎朝転移で出勤して来ている。別館の従業員用の部屋は、転移用に使っているみたい。


 ジイさんは、基本的に聞けば何でも教えてくれる。

 やはり一番気になるのは『空間魔法』だったわけで、早速教えてもらいアイテムBOX作りを始めたのだが、現時点では失敗に終わっている。

 失敗の理由は、空間魔法単体ではやはりスキルの影響で小石一つ程度しか容量がないことだ。

 では「他の属性と混ぜたら」となるわけだが、合わせるのに良さそうな属性が思いつかない。火、水、土、風どれを混ぜても意味がないどころか何か効果が出てしまうと危険なわけで、一旦中止ということになっている。ちなみに光もダメ。使う度に、目がおかしくなる程発光する魔法なんて使ってられない。闇は、まだ作ったこともないので要研究といった感じ。

 そもそもの話、空間魔法用の素材が珍しくて手に入りにくい。その為、簡単にテスト出来ないという問題も抱えている。『オーアリス』というリスの魔物が素材なのだが、とても珍しい上に頬袋の部分しか素材にならないので量が手に入らない。ジイさんですら、少量しか持っていなかったくらいだ。


 仕方がないので、自分用に氷以外の発動体を作ろうとしたのだが、こちらも苦労している。

 問題としては、二属性必要なことだ。

 火と水はまだマシな方で、ジイさんが自主的に実験してくれたのだが、出力をがんばって絞れば簡易サウナ。間違えば、火傷。という評価。正直、使いづらい。

 水と土だと、沼を作ることになる。

 

 ジイさん曰く「素材によって当然効果の違いが出る」とのことで、現在は良さそうな組み合わせを探しているところだ。

 うまくすれば、水と土で泥を作り、火と風で乾燥させるということが可能ではないかと考えている。

 これが可能になれば、好き勝手に建築が出来ると妄想しているのだが、強度の問題もありそうでそんなに単純な話ではないのかもしれない。


 

 そういえば、こんなに優秀なジイさんなので、給料いくら払えばいいかわからず本人に相談したら「いらんいらん」と言われてしまった。

 どうも魔族的には、夫婦の仲人は親同然という考えがあるらしく、ジイさん的に僕はもう家族同然なのだとか。

 ついでに、ちゃんとした愛称で呼んで欲しいと言われている。

 本名『ジャララガ・ジ・イルガルシュ』らしく『ジジイ』と呼ばれたいみたい。

 元日本人的に、若干抵抗があるので心の準備が出来たら呼ぶことを約束している。


 気づけば推定数百歳であるジイさんの親同然になっていたのだが、魔族は年齢を気にしないのだろうか……。

 

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