第54話 エルマの素材

 エルマさんからのお礼を受け取った。

 木箱ごと渡されたのだが、それなりの量があるようだ。

 これが何に使えるのかジジイに確認したところ、ポーション類の材料だという。

 珍しい素材ってのは事実みたい。

 でもこれ、偽ポーションの魔道具を使えるおかげで必要なくなった素材の一部なのではないだろうか。そう考えてしまうのは、僕だけではないはずだ。


 貰った物を個別に確認していたところ、マンドラゴラっぽい奇妙な植物を見つけた。

 顔っぽい部分を眺めていると、ジジイが近寄って来た。


「それはまだ先生には必要なかろう」


 一瞬何に使うものか考えたが、精力剤的な物だと考えがおよぶ。


「あーなるほど。まだ、奥さんもいないからね。誰かにあげるべきかな」

「ん? いやいや。先生それ勘違いじゃ。頭の毛が生えてくるアレじゃ、アレ」

「あっ! そっちの方ね。理解した」


 ニヤニヤしたジジイの指摘に、少し恥ずかしくなった。

 身近な必要そうな人を想像したが、今のところみんな頭の方は平気そう。

 カーマイン一家の肌が治っても毛が戻らない部分があれば使うのもいいかもしれない。

 利用方法はジジイが知っていた。錬金素材というより、漢方薬っぽい感じみたい。



 他に気になる物がないか見ていく。

 今度は、石みたいな物を見つけた。

 

「先生は、相当気に入られたようじゃな」

「どういうこと? これ何なんですか?」


 ジジイの方へ振り向きながら、問いかける。


「結晶化した世界樹の一部じゃな」

「世界樹……」


 世界樹の一部と聞いて、マジマジと見つめる。

 ゲームなんかの知識ですごい物という認識はあるが、物語によって多少違ってきていた気がする。この世界では、どういった位置づけなのだろう。

 ジジイ曰く、エルフの里にとっての象徴であり、守り神的な大木であり、信仰の対象でもあるらしい。世界樹の周りでは、植物の成長が促進されるようで「この大木の元に住めば安心」というエルフの歴史、生活の中から生まれた信仰のように思えた。

 最初「信仰の対象となるほど大切な物の一部を貰って大丈夫か」と思ったが、この説明を受けて理解できた。昔から大木と共に生活し、その恩恵に与るというスタイルだったわけで、僕はその一部を頂いただけということのようだ。大切な物であることは変わらないけれど。

 ついでにいうと、エルフの族ごとに世界樹にも多少違いがあるそうだ。地域性というか、環境の違いだろうか。


 

 世界樹の一部という良い物を貰ったわけだが、どうするべきか。

 若干、所謂いわゆるエリクサー病を患っているので、大切な物と聞くと少々素材として使いづらい。

 とりあえず必要な時がくるまで、山で拾った水晶のごとく部屋に飾っておくことにした。


 残りの素材は、大部分をジジイに預け一部は冷凍してみることにした。

 冷凍後に効果がどうなるか検証してみたいのだ。

 ただ自分でポーション作成ができないので、エルマさん辺りに依頼することになるだろう。


 

 頂いた素材の整理も終わったので、真面目に仕事をする。

 今朝フランクさんから連絡があったが、アルトピ侯爵様のところでも製氷機は評判が良いらしく追加注文が入ったようだ。なんと一気に十台のまとめ買い。さすがは、大貴族様。

 これでクロ丸達を買った分も稼げたので一安心。

 カーマインさん達の分も、このまま順調に稼げたらジジイに払おう。


 今日の自分の分は終わったので、趣味の開発をする。

 そろそろ氷の発動体もある程度うまくコントロール出来るようになってきているので、別の物を作りたい。

 今回は、土と風を合わせた発動体を作る。銃をイメージしてみた。

 早速完成した腕輪をジジイに検証してもらう。

 うん。勢いよく大量の砂利が飛び出す魔法が発動するようだ。思っていた物と違う。

 何がダメなのか考えたが、銃って爆発を利用していたはずなのでただの強風では勢いが足りないのかもしれない。


 

 散らばった砂利を集めながら、建築現場でよく見かけたことを思い出す。

 砂利と泥は用意出来るけど、あと何があればいいだろう。

 どうにも「なんでも石灰いれとけ!」みたいに考えてしまうのだけれど、こっち方面をいろいろ試すのもよいかもしれない。

 なんせここは異世界なのだ。面白い素材がきっとあるだろう。

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