第97話 残留物と詰所
我が家の大蛇事件から数日。
朝早くからイースさん達が馬に乗ってやってきた。
急いでいる様子ではないことや、表情から良い報告なのだろうと予想できる。
たまたま祖父の屋敷側にいたので、一緒に報告を聞くことにした。
応接室で聞いた話は概ね予測通りで、今回の大蛇騒動はその後他の痕跡を発見できなかった為、討伐完了という判断になったとの事。
あとは冒険者ギルドに運んだ大蛇を確認すると、体内にはいくつか残留物があり、損傷状態から考えると我が家の物もありそうなので確認してほしいという内容。
オスカーグレイと共に、イースさん達が帰る際に一緒にオストロイのギルドへ向かう。
到着したギルドで見せられた物の中には、僕の大切にしていたトゲトゲバットも含まれていた。無くなったことに気付いていたが、地味にショック。少し気持ち悪いけど、これは持って帰って作り変えようと思う。両親から誕生日に貰った物だし。
他は、コレといった物は無さそう。元が良くわからないなっている物もある。
持って帰るのは、一つだけで良さそうかな。
ギルドの受付へ今回の気遣いについてお礼に向かうと、何故かそのままギルド長の元へ案内される。
室内に入ると、当然だがヤーレンギルド長がいた。
僕が席に着くとヤーレンさんは話し始めた。
「悪りぃな、わざわざ来てもらってよ」
「いえ。今回はお世話になりました」
「んで、早速なんだが提案があるんだわ」
ヤーレンさんの話は「我が家の近くに冒険者ギルドの詰所を作って何人か雇わないか」といった内容だった。
突然の提案に、少々驚く。
言われてみると、たしかにあると助かる。
前の家近くには領主様が駐屯所を設置し兵士が数人いるのだが、現在の我が家は離れていてあまり恩恵を受けることが出来ていない。
家の建て直しで出費も嵩みそうだが、今回の様な事を考えると多少出費することになってもお願いした方が良さそうだ。それを可能とするだけの稼ぎはあるし、家族の安全を考えると安い物だ。
少し頭の中で内容を整理し、お願いすることを伝えた。
細かい内容は、今後詰めていくことになる。「作業のお手伝いもお願いできるのか」とか「詰所の規模」とかいろいろね。
今後、この件の責任者はイースさんだって。
それを聞いて、なんとなくこの話が理解できた。
たぶんお風呂問題もあってか、女性冒険者や娘から色々言われて「丁度いい」ってことになったのだろう。ギルドとしても、仕事が増えて収入が増えるからね。
ヤーレンさんとの話を終えて、ちょっとした買い物なんかを済ませて家へと帰る。
今回、せっかくこんな話になったのだからと食事の時家族に相談して、敷地を大きく広げることにした。
といっても、ほとんど僕関連の施設になりそうだけど。
オータロウ達も増えたし、パン太たちやハルジにも広いスペースを用意してあげたい。
翌日から、周辺の確認。
パン太はお疲れなのか、ここ数日元気がなくお留守番するみたい。大蛇の時がんばってくれたもんね。ゆっくり休んで欲しい。
リリーも留守番で、残りはみんなで探索。
久しぶりに貯水池に来たけど、少し水が溜まっていてカワウソっぽいのがいる。
こちらを見ると、いつのまにか作られている巣穴っぽいものの中に逃げ込んで行った。彼らも大蛇の影響で移動してきたのだろうか。
とにかく、あんみつトリオが襲っていかないで良かった。
水車計画も一時的に白紙に戻っているし、ここは彼らに提供しても良いかもしれない。
そのまま周囲を回ったり、ハルジに乗って上空から様子を見たが、以前と大きく変わったところは無さそうで安心した。
環境を整えればカワウソみたいに移住してくる動物も増えるのだろうか。
昔考えた、動物園に遊具やアトラクションを加えた施設を作るのもおもしろそうだ。
帰宅し、ドムさんに元バットだった物を違う物に打ち直してもらう。
今回は、鈍器風の剣。
大蛇から出てきたし、せっかくなので『草薙剣』と名付けることにした。
名前の割に弱そうな見た目になった武器は、なんとも僕らしいと思える物だった。
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