第33話 エアコン

 エアコンを作るはずが、失敗して冷凍室専用ユニットが出来てしまった。

 リリーの為にもエアコンが欲しいけど、材料がもうない。

 またフランクさんに頼むのも申し訳ないので、お小遣いで買いたいが、まだ祖父が戻って来ないので魔道具作成に対する対価も入ってない。

 そういえば、売価と報酬決めてないな。

 仕方がないので、冷凍室専用ユニット名付けて『凍くん』をプレゼンして新たな材料を手に入れたいと思う。


 食堂に行って果物を貰う。

「母さん。このオレンジみたいなの頂戴」

「シエンナ。これをバウくんにあげても大丈夫?」

「はい、お嬢様。問題ございません」

「そう。で、バウくんいくつ必要?」

「ん-。三つくらいかな」

「はい、三つ。でも、何に使うの?」

「内緒。後で食べれるから待ってて」

 貰ったオレンジを抱えて冷凍小屋へ。


 念のため半日ほど放置して、夕食後に持って来る。

 皮を剥いて……堅いので切って中の実を削り出す。

 ちょっとだけ味見。おいしいけど酸っぱいので、マイルドにする為に氷を砕いて混ぜる。

 うん。氷が細かくならない。中途半端だけど、妥協しよう。

「はい。オレンジのたぶんシャーベット」

 まずは、母さんと祖母から。

「これが朝のオレンジを使ったものね」

「あら。冷たい。バウちゃんありがとうね」

 祖母は、冷たさにビックリしてる。

「まあ! 冷たくておいしい! タブンシャーベットいいわね」

「あっ。『タブンシャーベット』じゃなくて『オレンジのシャーベット』です……」

「うん。おいしいわ。バウちゃんはそういう名前にしたのね。シャーベット覚えたわ」

「シエンナも食べてご覧なさい。バウくんが作ったのよ」

 よしよし、好評のようだ。

「果物を凍らせると、暑い日においしく食べられるよ。あと、お肉とかも長持ちすると思う」

「そうなの? 売れそうね。バウちゃん寒い魔道具の材料は何かしら?」

「じいちゃんに貰ったものと、フランクさんに頼んだ素材で作ったからわかんない。そっちに聞いてみて」

 祖母に「賢いわねー」って褒められて照れてしまう。元大人でごめんなさい。

 シエンナさんに手伝ってもらって、他の人達にも配る。

 みんな「おいしい」って言ってくれてよかった。

 そんなこんなで、祖母がフランクさんに素材の手配を頼んでくれた。シメシメ。



 材料が揃うのに、少々時間がかかった。

 冷たくなるプレートの素材が他より希少みたい。

 さて、エアコンを作るのに前回の失敗を踏まえると、冷たくなるプレートか風のプレートの効果を下げる必要があるのだけど、どうしたものか。

 通常の魔道具を組み合わせると、魔石の消費が多くて効率が悪すぎる。

 どうも僕のスキルを使うと、魔石効率が格段に良くなるみたい。

 なので、スキルを使った物にしたいが、それだと凍くんになっちゃうんだよね。

 試しにポタ水と冷えるプレートを組み合わせてみたら、結構な勢いで氷ができた。『製氷機』の完成だ!

 うん。でもこれじゃないんだ。

 長年親しんだポタ水のイメージが強すぎて、水の量が増えることを想定し忘れた。


 現時点の材料では、真っ当なエアコンは難しい。

 製氷機で作った氷に、僕のそよ風の魔道具を当てることで妥協した。

 氷の補充や排水で、シエンナさんやジムくんのような使用人達が大変だろうけど、暑いよりは全然マシだとかで喜んでいる。


 氷を手に入れるのが容易になり、古いタイプの冷蔵庫も完成した。

 冷気が下に降りていくのを利用したアレである。

 試作品で、長時間冷気を保つのに手間がかかるが、そのうち素材を変更した物を作り楽にしたいと思う。



 肝心のリリーだが、氷をいっぱいいれた容器を近くに置いておくだけでも喜んでいる。

 時々、大きな氷を噛んだり転がしたりして楽しそうだ。

 パン太も同じようなことをしているので、真似してるのかと思ったが、どうやら彼も暑かったようだ。

 考えてみれば、黒い毛皮だしそりゃそうだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る