第32話 想定外

 祖父母の家も随分と形になって来た。家ってより、屋敷って感じに見える。今後は屋敷って呼ぼう。

 我が家の建築でも思ったけど、やはり専用のスキルを使える職人さんの仕事は早い。とはいえ、四十日は経ってるのかな。

 祖父は「人員の手配等でもう少し時間がかかりそう」とかで、フランクさんとオスカーさんが先に戻って来た。

 早速、フランクさんに素材の取り寄せをお願いする。祖母には話をしているので、問題ない。


 フランクさん達に付いて、完成間近の祖父母の屋敷に入る。

 職人さん達の邪魔しちゃ悪いと思って、ほとんど入ってなかったので楽しみ。

 テンションが上がり、勝手に探索開始。オスカーさんが付いてくる。

 玄関から入ると、階段がみえる。隣が食堂。

 我が家に近い方は、関係者施設が多めかな。目隠しの柵ほどじゃなくていいけど木を植えたりした方がいいかも。

 反対側は、応接室や客間みたいだ。まだ家具もないし殺風景。

 階段の裏を進むと、別館への通路。まだ建設中。

 玄関に戻り二階へ。

 棚がある部屋が資料室とか書庫かな。

 部屋がいくつかあって、大きな部屋が祖父母の部屋だろう。

 我が家側にも階段があって、一階や地下に裏からいける。

 いいねいいね。でも、ちょっと大きくないかな。

 満足したので、我が家へ帰る。

 一応僕が作った水路擬きも残されてて、木の板を渡した小さい橋が架かってた。



 二日後、お願いしていた素材が届いた。

 早速、ドムさんに箱を作ってもらう。

 冷たくなるプレートと風のプレートを合わせて起動!

 うんうん。いい感じ! ってちょちょちょ! 寒すぎ!

 ストップ! ストップ!

 個別に試した時は、スキルの影響で程よい感じになっていたのに……。


 一度、別々に作り直し確認。

 やっぱりいつもの一般的な物よりも、効果の低くなる状態。

 ということは、スキルが悪さして組み合わせで効果の増幅が起きている?

 悪さというより、考え方によっては良くなってるな。

 あとは、魔石の消費と組み合わせでの検証か。

 そういえば、これ凍るくらいになるなら冷凍庫が作れそう。

 そうすると、アイスクリームにジェラートにシャーベットが作れる!

 三つの違いが、曖昧にしかわからないけど今はいいだろう。


 実験したいけど、どこでやろうか。

 母さんへ相談しよう。最近は祖母と、食堂でのんびりしていることが多い。

「母さん、魔道具の実験がしたいんだけど凍っても良い部屋どこかな?」

「ん-? バウくんは何を言っているの?」

 見てもらった方が早そうなので、手招きして自分の部屋に来てもらう。

 割と暇なのか、祖母やシエンナさんオスカーさんも付いてくる。

 

 ドムさんに離れてもらって、スイッチオン。

「あら! 涼しい! いいわね!」

 女性陣が、キャッキャと騒いでいる。

「ん? ちょ、ちょちょちょっとバウくん。寒くなってきたわ。止めましょう」

「ね。このままだと、凍っちゃうかもしれないから聞きに行ったの」

 シエンナさんは、祖母のために羽織るものを取りに行った。

「バウちゃんは本当にすごいわね。ばあちゃんがお部屋を用意しましょう」

「ばあちゃんありがとう!」

 祖母がフランクさんに指示して、急遽大工さんに小屋を作ってもらうことになった。

 

 翌日には小屋が完成。四畳半くらいかな。

 水を入れた桶をいくつか用意して、散らして配置。

 入り口すぐのところに魔道具を設置して、実験開始。奥だと、凍って止められなくなるかもしれないからね。

 半日放置した結果は、正面の桶の水は完全に凍ってる。他のは、距離によって氷が張ってるくらいだったりマチマチ。

 しっかり密封して、時間かければ冷凍室っぽくなりそうかな。

 引き続き検証していこう。



 そういえば、リリーはこの小屋の周りがお気に入りだ。

 近くの日陰でくつろいでいる。

 今まで、暑かったらしい。

 気づいてあげられなくてごめんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る