第8話 新しい家族

 町で、スキル告知の儀を受けてから数日、誕生日を迎えた。



 あの日の夜、スキルについて家族と話し合った。

 僕がやったのは、図形を描いただけだが……。


 スキル告知の儀で、細身の役人さんが言っていたが、あの儀式でわかるのは過去の情報から予測されるスキルの傾向のみ。そこから先は各自、各家庭で何が出来るのか探る必要がある。全てを教えてくれるほど、神様も甘くないのだろう。

 最初は、儀式と神様は関係ないだろうと思っていたのだが、神殿にて例の啓示があった為、疑うことをやめた。正確に言うと、神と対話出来るわけでもなく悩むだけ無駄なので、とりあえず受け入れたといった感じだ。



 三歳になったので、今日から自らのスキルについて学び、探っていくことになる。

 両親は、この数日その為にいくつかの素材を集めてくれた。それを、プレゼントとしてくれるようだ。


「今年は、これだ。まだ刃物は危ないからな。粘度に布、それから紐に絵や文字を書ける道具だ。文字は、オリビアとミグマに習いなさい」

 父さんも文字は書けるが、家にいる時間は母さんたちの方が長いので、任せるつもりみたいだ。


「私のは、水の発動体であるこの筒よ。本当は、私とお揃いの指輪タイプが良かったけど、すぐサイズが合わなくなってしまうものね」

 思わず「うわぁ!」と声が出てしまった。憧れの魔法!発動体だ。

 ストローみたいな見た目の木製の筒に、金属と魔物の素材で装飾されていて『キセル』のような形は、蛇口を連想させる。


 そして、最後は兄さんだ。

「ちょっと待ってて」と言って外に向かっていったが、不安しかない。

 一歳では、蜘蛛。二歳には、とんぼの羽。また昆虫関連かと思っていると、黒いぬいぐるみの様な物を抱えて戻って来た。

「誕生日おめでとう! 俺からは、この子だよ」

 差し出された猫系っぽいぬいぐるみを受け取ると、想像より重く生暖かい。

 少々雑に持っていたように見えたし、動いてなかったのでぬいぐるみだと思っていたが、どうやら生きている。

 近くで見ると、黒のヒョウ柄だった。離れていると、黒一色に見える。

「名前はまだなんだよね。どうしよっかなー」

 兄さんに任せると『兵頭』とか『アケミ』とか『大阪のおばちゃん』とか付けられそうなので、急いで思考を遮る。

「にーちゃ。お名前。あとで言う」

「ん? 自分で決めたいのかな? まあいいけど」


 とりあえず、自分で名前を付ける権利を手に入れた。

 兄さんは、両親から「どこで拾ってきたのか」などの確認をされていたが、叱られているわけではなさそうだ。

 受け取った子は、僕の足元に隠れ兄さんをみながら震えている。

 この子とは、うまくやっていける気がする。

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