第93話 魔物への備え

 古びた神殿での出来事から少し経ったある日。

 我が家にイースさんがやってきた。相方さんも一緒。

 二人は馬から降りると、祖父の屋敷へと入っていった。


 なんだろう。

 気にはなるが、後で教えてもらえるだろうし妊娠している母さんの代わりに畑作業を行う。母さんには、簡単な作業だけをお願いしている。

 ジム君やカーマイン一家もいるけど、任せっきりにするんじゃなくて自分でも何かしたい。全て任せるってのは、やっぱり少し苦手。

 あと先日の件で、未だに少しモヤモヤしているので何かしている方が気が楽。


 話が終わったのか、馬に乗ってイースさん達は帰って行った。

 畑の横を通過する時に手を振ってくれた。相方さんは、会釈。いつもペコペコ頭下げてる印象。


 祖父の屋敷からグレイが呼びに来たので、一緒に向かう。

 屋敷に入ると、応接室に案内された。祖父はイースさん達との話の後、そのまま応接室にいたようだ。

 室内にはすでに、警備責任者のアルロさんもいる。


「おう。バウ来たか。まあ座れ」


 座って待っていると、しばらくしてカーティスと父さんもやって来た。

 祖父が父さんまで呼ぶなんて、重要な話のようだ。


「揃ったな。皆知っていると思うが、先ほど冒険者ギルドより連絡が来た。内容としては、先日話のあった下流で目撃された魔物の件だ」


 祖父の話を聞いてみると、結局領主様からの依頼で冒険者ギルドが例の蛇の魔物を討伐することになったらしいのだが、思いの外苦戦していると言った内容だった。何名かは、犠牲になっているらしい。

 で、オストロイ冒険者ギルドの主力を投入しているが一定数の討ち漏らしが発生していて、周辺地域も安全ではなくなってきている為、注意喚起に我が家を訪れたということのようだ。

 我が家は僻地なのと、以前の大量発生の事件もあって、こういった場合連絡が来るように祖父が少なくないお金を払ってギルドに依頼していたらしい。ありがたいことだ。

 状況次第では、こちらに冒険者も派遣されるように話がまとまったんだとか。


 ということで、祖父からの話は理解した。

 それで、僕たちは何をすべきで、何ができるかだ。

 以前の大量発生のおかげで、割と立派な壁や堀はある。

 正直相手が蛇メインとなると、這って越えられそうだけどね。


 出来そうなことと言えば、武器の用意になるのかな。

 以前作った熱風の杖は有効だろう。変温動物だし。

 当然氷も効くはずなので、僕の役目はこれか。赤熊の時はうまく出来なかったけど、あれから練習を続けている。今なら、出来るはずだ。

 冷凍庫ユニット凍くんもできれば増産しておこう。戦えない人達が、室内からこれを使うだけでも効果があるはずだから。

 砂利をぶつけるのは、相手の大きさ次第か。

 沼を作る系は役にたたないだろう。蛇だし。


 各自出来る事、必要そうな物を話し合ってから緊急会議は解散。

 魔道具関係で必要な物は、祖父が手配してくれる。僕は作るだけでいい。


 退出後、工場へ向かい材料の在庫を確認する。

 ついでに自宅の倉庫もチェック。

 すぐに使えそうな素材は無さそうかな。

 自室に置いてあった赤熊のグローブは使えそう。

 今更ながら、偽ポーションの魔道具を兄さんに持って行かれたのが痛い。こんなことになるのなら、高額ではあるが治癒の材料を揃えて再度作っておくべきだった。

 ジジイも所持しているけど、次いつくるか聞いてないんだよね。早めに顔を出してくれると助かるんだけどな。


 僕にとって一番の問題は、パン太達含めた人間じゃない家族たちだろう。

 彼らをどうやって守るかだ。

 クロ丸、ちゃちゃ丸、それからアカツキにハルジは襲われる前に飛べば平気か。

 難しいのは、パン太一家。

 あんみつトリオ大丈夫かな。素直に逃げてくれるといいんだけど、やんちゃな二匹がいるだけに少々怖い。

 リリーは大丈夫そうな気がする。謎の安心感。

 

 そうだ。作りかけの水車用の塔を避難所に作り変えるか。

 上から攻撃出来るようにするのも良さそうだ。

 本来の目的とは離れていっているが、作っていてよかった。


 蛇に恨みはないが、襲ってくるならやるしかないね。

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