第67話 負金属2

 翌日ジジイがやってきたので、負金属を見せながら知っていることを聞く。

 防具等に使われると聞いていたが、建物を作る際に使用すると転移を妨害できる効果もあるらしい。ということは、王城なんかでは使われているのかな。

 そもそもジジイ以外に転移出来る人の話を聞いたことが無いが……。

 他にも用途がありそうだが、すぐには思いつかない。

 

 とりあえず危ない物ではないらしいので、試しに発動体作りに利用してみる。

 ドムさんにお願いして形を整えてもらう。今回素材として採用したのは蟻系の魔物で、土属性。負金属は高価な物みたいなので、少量のみ。と言っても、譲っていただいた物が少量なのでその大半となってしまっている。

 比較のために、ジジイにも普通の金属で同じものを作ってもらった。

 完成したプレートに魔法陣を刻み、早速試してみる。

 ジジイが作った普通の物を本人が試すと、土を作り出すよくある物に仕上がった。

 次に僕が作ってスキルで変化させた物の方。

 単体で魔力を流してみたり、地面に当てて試した結果「若干土を変質させる」という程度の物だった。


「うーん。思ってたのと違うなー」

「先生は、どうなると思っておったかな?」

「土属性が強化されるかなーとね。でも強化はされていない。若干土に影響を与えているようで普通の金属で作った物とも違う感じ」

 ジジイは、変質した部分の土を触って確かめながら「なるほど」と呟いた。


「先生。これ魔物本来の力に似とる気がする」

「どういうこと?」

「この蟻の魔物じゃがな、巣を作る時に口から魔力を含んだ液体を出して頑丈にするわけじゃが、その状態に似とる」

「じゃあ土属性から、水属性に変わってるのかな?」

「そこはワシにもわからんな」

 この結果は、どう判断すべきなのだろう。

 

 元の世界で言えばネットで検索すると答えが見つかったのだろうが、ここは異世界でそういった物が存在しないうえに、魔法なんて不可思議な物もある。

 しばらく悩んだ後「そういう物」と一旦諦める。少々頼りにしていた法則も崩れ、基準とできるものがなくなってしまった。

 他属性の素材でも試してみないとわからないが、純粋に単属性を強化するのには使えないことは理解できた。

 研究材料としては出来るだけ手に入れたいので、いくらで譲ってくれるのかわからないがデバン様に購入の意思は伝えたいと思う。

 他属性の試験は、購入後とした。あと、二属性で強化された場合でも試してみたい。



 本来なら、すぐにでも負金属の追加をお願いに行くところなのだが、別金属のサンプルも手元にある。こちらでも必要になる物があれば、追加購入の相談に町へ行く際に手に入れたい。

 ジジイやドムさんに見てもらったが、負金属ほど珍しい物は無いようだ。

「ふむ。残念ながら属性金属はなさそうじゃ」

「属性金属?」

「うむ。発動体などに用いれば属性が強化される。今回の物のように珍しいので、中々手に入らんな」

 負金属のような物があるなら、逆もあって当然か。

 ただ属性金属の強化の方は、対応した属性でないとだめみたいだ。

 もしかするとどれでも強化してしまう物もあるかもしれないが、二人は知らないみたい。あっても僕らが簡単に買える値段になるはずもないだろう。


 まだ利用したことのない金属も含まれていたので、それぞれの特性について学ぶ。

 たしかに魔道具や発動体の素材として考えると、電気でいう通しやすさの違いみたいなものしかないようだ。それでも一通り試す必要はあるだろう。



 結構頭を使ったので、今日の作業はお終い。

 部屋に戻ろうとして、家の外壁を目にする。

 負金属の割合を増やした場合、先ほどの効果は上がるのだろうか?

 だとすると、先日感じたようにまたしても「タイミング悪っ!」となってしまいそうだ。


 悶々としながら、お風呂に入り部屋へ帰る。

 チビ達を抱きかかえ、癒される。

 すぐに大きくなってしまうと考えると、この時間を大切にしたいと思う。

 

 それにしても、この子達からみて僕はどう映っているのだろう。

 パン太達よりサイズ的に小さいので、兄とかだったり。(立ち上がる変な兄貴だと嫌だなあ)と思っていたら、パンチされた。

 こうなると「元気ならそれでいいか」となってしまうのは仕方ないことだ。

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