第68話 乗り物2
数日間真面目に各金属での検証を行った。
まあ何と言うか、大概予想通りの結果となった。
そのままデバン様に報告しても良いけれど、やはり多少なりとも期待に応えたい。
領主様の屋敷となると部屋数も多いだろうし、サウナの魔道具でも報告すれば良いか。注意事項さえ守れば安全だし。
一応祖父に相談すると「もうしばらく先にした方が良い」と言われた。
すぐに完成させたとして報告すると、今後それを基準として考えられるからってことみたいだ。
出来る男アピールをしたことで、その後仕事を多く回されていた奴を知っているだけに、その言葉には納得してしまった。その分給料が多ければ良かったりもするのだろうけど、あいつの場合ほとんど変わらないって言ってたっけ。
ちなみに僕は、給料より時間が欲しい派。当然両方多いのが理想だけど。
バランス取るのって難しい。自分で選べる場合ばかりじゃないからね。
そんなこんなで六輪車の作り直しを行うことにした。
幸いなことに、今回検証を行った金属の中に良さそうな物があったので、こちらで動力部分を作り直す。
強度は増すが、若干魔力効率が悪くなるという物なのだが、僕とジジイにとっては問題のない程度だ。それに、魔力効率部分は僕のスキルで補えてしまう。
ということで、プロペラサイズ直径約三十センチメートル物と、少し大きくした約三十五センチメートルの二種類を作る。
「なーんだ、五センチしか変わらないのか」という感じかと思うのだが、実は全然変わってくる。
耐久試験も問題なし。前回と同じベッドサイズで作成し、いざ試乗。
とりあえず乗り慣れているジジイに運転を任せる。
ゆっくりと敷地内を走らせていると、なんだなんだとみんなが見学に出てきた。
「馬がいないのに走ってるぞ⁉」
「なんだこれは!」
「バウくん危ないことはやめなさい!」
みんなが慌てているのでいったん停車……って、またブレーキ忘れてた!
しかしながら流石ジジイ。上手く風を操り空気抵抗で減速させた。
僕は降車して、ジジイに低速で運転してもらい安全をアピールする。
すると、祖父は興味津々で乗りたがった。
「これはすごいな、馬がいなくても走れるうえに小回りもきく」
祖父や周りが褒めてくれたのだが、僕的には「こんなものかな」という印象。
今のところ運転出来るのはジジイと僕だけだろうという話をすると、祖父は残念がっていた。
母さんや祖母は「完成したら乗せて頂戴ね」と言って帰っていった。本心かはわからない。
最高速度等も確認したかったが、やはり先にブレーキが必要だと思い一度工場の方へと戻る。
単純なのは、タイヤに利用した素材を車輪もしくは車軸に当てて抵抗で減速させる物だろうか。以前考えた逆方向への動力というのは、今になってみると危ないような気がする。
別のプロペラ等をつけて、そこに水を発生させるというのも考えてみたがどうだろうか。腐食は、定期的な点検で対処できる。ただ、発生させた水の処理をどうするかだ。前の世界だと、夏場の車のマフラーから結構な水が出ているのを目にしたこともあるし少量ずつ排出するようにすれば問題ないだろうか?
色々考えたが、とりあえずということで単純な物でいく。手で操作するレバー式にしたけれど、運転席を馬車のように高くして足で踏む方がいいかもしれない。
正確な計測機器がないので凡そということになるが、速度は十五キロ近くまで出せたと思う。自転車くらい。これ以上は、しっかりと整備された道でないと危ない。
十五キロ程度とはいえ、馬車での移動の二倍くらいにはなる。
次に動力サイズを五センチ大きくした物で試す。
こちらの場合、凡そ三十パーセントのパワーアップになりそうだ。
某カレー屋さんの大盛以上かな。
すごく増えた感じもするが、いっぱい食べる友達が「大盛じゃ足りない」と言っていたのを思い出し、そうでもない気がしてきた。
きっと食べ物で考えたのがよくなかったのかもしれない。
あとはしばらく走らせて、タイヤや他の部品の摩耗のチェック。
大丈夫そうならパワー的にはまだ余裕があるので、若干のサイズアップと外装を作って第一号は完成でいいだろう。
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