第80話 遊具

 例の卵は、今のところあまり変化が無い。

 触れてみると、生きているのはわかる。

 時々、クロ丸達が上に乗っているが、温めようとしているのだろうか。

 サイズ的に無理があるのだが、卵に乗っているのは似合っているしそのままにさせている。



 小型の水車の塔だが、まだそのままだ。

 あんみつトリオが時々遊ぶので、このままでいい気もしてきた。

 塔の強度は問題なさそうだし、水車だけ別の形で試しても良い。


 ということで、塔を有効活用すべく木の板を用意してソリを作る。

 斜めに先端部分を追加し、穴を開け縄を通し持ち手を取り付け完成。

 そして、塔の上から滑り降りる。

 楽しい。

 思ったより速度が出て危なかったが、ソリが木製だったこともあり僕のお尻は守られた。

 滑り降りた先は、水路だった方が良かったのだろうが毎回濡れるのは遠慮したい。

 カエル素材をクッションとして採用。タイヤの時には今一歩の評価となってしまったが、案外いろいろなところで使えている。


 安全を確保したところで、他の人にも試してもらいたくなる。

 こういう時は、カーマイン一家のアリザちゃんとラズくんが呼びやすくていい。

 まず、僕自ら滑って見せる。

 次は、彼女たちの番だ。

 恐る恐る塔に上る二人。そのまま指示通り滑ると、驚き怖がりながらも笑顔になった。笑顔は、滑り終わった安心感と楽しさ両方っぽいかな。


 これ、後から考えるとパワハラになっていた可能性がある。雇い主からの指示で断れない状況だっただろう。高所恐怖症なのか確認していなかったのもダメな点だ。

 今は楽しそうに滑っているので、今回はセーフかな。今後気を付けるようにしよう。


 子供たちが、ワーワーと楽しそうにしていると大人というのは興味を惹かれやって来る。

 気づけば、大人たちが滑るようになっていた。母さんやシエンナもこれくらいなら平気みたいだ。

 祖父は身体が大きいので、引っかかってうまく滑れていない。もう少し広く作れば良かったと思ったが、そもそもこれ水車用なんだよね。祖父には、大型の塔が完成するまで待ってもらおう。ただそちらは、濡れてしまうことになるが……。


 今になって思えば、元の世界で大人になってもブランコなどの遊具を見ると乗りたくなっていた。

 遊具ってこちらの世界だと、新しい物としてヒットしそうな気がする。単純な物なのでそこに考えが及ばなかった。縄跳びが流行った時は、気づくチャンスだったのだろう。


 こうなると、脱線が始まる。

 次に作るのは、大人も遊べる大きなブランコ。

 木から縄を下ろし板を取り付けるだけだと楽だが、祖父が枝を折りそうな気がしてちゃんと柱を作るところからにした。塔を建てた経験が活かされる。

 完成したので、祖父で耐久テスト。これで大丈夫なら、他の人達も安心して利用できる。

 どうやら大丈夫のようだ、勢いをつけすぎて落下しないように注意をしておいた。


 それから、シーソー。

 最初、丸太の上に持ち手の付いた板を置いて完成としたが、コレジャナイ感がすごかった。なんというかシーソー特有の浮遊感が足りなかったし、安定感が無いのも問題だった。

 ちゃんと作り直し、ある程度納得できる物になった。「ばあちゃんやエヴァでも楽しめる」と言ったら、エヴァに小突かれた。ひどい。


 公園の遊具と言えば、鉄棒。

 でもこれは却下だ。絶対に祖父が壊す。

 良いところを見せようとして、力を入れたところでバーが曲がるだろう。こちらの世界の身体系スキルってのは、それくらいすごいはずだ。


 ターザンロープはどうしよう。

 ブランコみたいに座れる形なら、多少滑車が歪でも平気かな。

 


 あとは、ジャングルジムも考えたがやめた。

 塔の上から網を垂らせば、似たような感じになるかなと思ってのことだ。

 そういえば、回転する丸いあれの名前を知らない。あいつもいつの間にか消えていったな。僕に名前を知られることもなく。


 

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