第90話 近隣国家
久しぶりにオストロイにやってきた。
以前同様ヒッポグリフで移動するのは憚られるので、いつも通りの馬車だ。
まだ上手く乗りこなせていないのも理由の一つ。
メンバーは、僕とオスカーにグレイ。他には、定期的に祖父の元に来る伯父さんの商会所属の人達も一緒。
用としては、以前考えていた神殿での神の啓示の調査がメイン。ついでに、情報収集だね。
商会で馬車を降り、まずは神殿へと向かう。
神殿に到着すると、いつもの役人さんからありがたいお話を聞いてお祈りをする。相変わらずの長さに心が折れそう。
結局いつもの言葉が、頭に浮かぶのみ。
これなら、来るとしても次回も一年後とかで良いかもしれない。
今日は寄進と一緒に、女神様の像に手作りのパイを供えておいた。さすがに骨を置いて行くわけにもいかないので、ワンちゃんの像には謝っておく。
よくある銅像みたいに触れて良いなら、しっかりと磨いて綺麗にしてあげるんだけどな。
神殿を後にして、商会とは違ったルートでの情報を得るために、冒険者ギルドへとお邪魔する。
中に入ると、ヤーレンギルド長の娘イースさんがいた。
「あっ! 性格の良い子だ! どうですか? 今日も似てないですよね?」
「はい。そんな気がします」
「ですよね! ほらほらーみんな聞いた?」
久しぶりに会ったが、以前と変わらない。おもしろい人だ。立場的なものもあるだろうけど、みんなに愛される雰囲気のあるお姉さん。
しばらく室内を連れまわされ、同じ言葉を繰り返した。
イースさんは満足したらしく、ご機嫌で相方の女性と外に出て行ってしまった。
やっと落ち着いたので、よく話をする男性職員さんに最近の情報を売ってもらう。
「こんにちは。何か新しい情報があればお願いします」
「やあ、こんにちは。うーん、そうだねぇ。知ってるかもしれないけど、パーノポーを含む近隣の情報なんてどう?」
「じゃあ、それをお願いします。おいくらですか?」
指定された小金貨一枚を、グレイに払ってもらう。
今日は、少し高い。有益な情報なのかな。
職員さんから聞いた話は、衝撃的だった。
まだしばらく続くと思われたパーノポーの内乱だが、終わりが見えてきているのだとか。
その理由だが、優勢に見えた第三勢力が突如として弱体化してしまったらしい。
追い詰められていたハンブルク含む周辺国家が支援する勢力は、守りを固めていたが攻めてこないのを不思議に思い、近くの町へ偵察を兼ねた部隊を出兵させたところ相手方の主力が見当たらなかった。
彼らは、このまま守っているだけではジリ貧だと感じていた為、罠かもしれないと感じつつも「千載一遇のチャンス」とばかりに少数の守りを残し、一気に攻め込んだ。
結果は勝利。
近くの町を取り戻した彼らは、そのままの勢いで攻め続け連戦連勝。
すでにパーノポーの大部分が、彼らの支配域となっているらしい。
アクース教勢力の方だが、蝗害の影響もあって近隣の同盟国の一つがこちらも崩壊。ワイバーンの紋章で有名な強国も、蝗害による食料不足はどうにもならなかったようだ。
運の悪いことに、魔物による被害も重なったのだとか。
なるほど、それで以前聞いた時にパーノポー内の、アクース教勢力への支援が少なく感じたのか。
同盟国の崩壊は、すでに一年以上前のことなんだって。電話とかないから、情報くるの遅いね。パーノポーが内乱状態で混乱してたのも、それに拍車をかけているのかな。
ん-、意図的に情報が止められていた可能性もあるか。
ということは、この情報を僕が聞いている現在、すでにパーノポーは周辺国が支援していた勢力によって統一されている可能性もありそうだ。
このまま落ち着いてくれればいいんだけど、どうなることやら。
どうでもいいことだけど、国の名前変わったりするのかな?
情報を売ってくれた職員さんにお礼を言って、冒険者ギルドを出る。
そういえば、パーノポーの第三勢力主力はどこに行ってしまったのだろう。
単なる略奪だけを目的とした組織だったのだろうか?
だとしても、突然消えるのは不自然だよね。
いつも通り賑わうオストロイの町の人々を見て、ふとそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます