第46話 治癒の腕輪
魔道具店から出てすぐに、ジジイに話を聞いてみたかったので、彼らの泊る宿へと向かった。
部屋は、オスカーさんと二人なので六畳程にベッド二台。
下が荷物置きにもなっている机に椅子というシンプルな造りだった。
四人でも話をするくらいなら問題ない広さだ。
各々ベッドや椅子に座る。
「ジジイさっき見た治癒の腕輪なんだけど、作った事ある?」
「当然じゃな。欲しいんか? えーっと、これじゃな。ほいっ!」
あっさりと取り出し、こちらへ
若干慌てたが、両手でしっかりとキャッチ。
「そういえば、先生はそのままじゃ使えんかったな。帰ったら研究じゃ。それに、あそこには無かったが治癒より浄化の方が人気じゃ。そこらに出まわっとる物でも十倍くらいするがな」
たしか治癒の腕輪の販売価格が、大金貨十枚だった。浄化だと十倍ってことは、大金貨百枚! 十億円……。
「この治癒の腕輪ってどれくらいの効果があるの?」
「そうじゃな。指一本分くらいの傷ならすぐに塞いでしまう。といっても痛みは和らぐ程度で残るがな」
「さすがに、切り落とされた腕を戻すのは無理か」
「無理じゃな。過去に『すぐに治そうとして成功した』話があったはずじゃが、たまたまじゃろ。それからは、噂を聞いて同じように治療するようになったが成功したという話を聞かんな。見た目治ったように見えても、ほとんど動かなかったり、壊死したりな。腕にこだわるより、さっと治療して出血を止めた方がよい。生存率も上がるしの」
「さすがに、部位欠損は無理か……」
「そこいらに売られとる物では、無理じゃ」
「ん? 治せる物も存在するの?」
「そういった物が存在するという話は、聞いとる。ワシでも見たことがないがな。ただ『治せる者』ならば知っとるよ」
治せる者って所謂『聖人聖女』って存在なのかな。
治せる物って方は、どこかの国の国宝とかだろう。
続けて浄化について聞いてみたところ、毒や呪いなんかを治す効果があるらしい。
要するにお貴族様が毒殺なんかを恐れて欲しがるから、高価になるんだね。
というか、呪いって存在するのか怖いな……。
そういえば、未知の病を「呪い」っていう地方というか人も存在したはず。だとしたら、浄化すれば病気を治せる可能性もあるってことか。
なるほど、そう考えるともっと高くても納得できる。
ジジイの話では「教会や、軍を率いるような立場でない限りは、治療薬を用いる方がよい」という評価。
治療薬。お約束のポーションの存在をすっかり忘れていた。
ただこれ、一本金貨一枚以上。最低でも百万円だってさ。高く感じる。
作り手の腕やスキルによってかなりの価格差があるらしい。それこそどこかに、部位欠損治せちゃう薬を作れる人がいるのかもね。
ある程度治癒の腕輪についても理解できたので、お昼を食べてからアルトピ観光を再開。
先程話題にでたので、ポーションを見に行く。
ここも警備は厳重。そりゃ当然か。
先に服を買いに行けばよかったかもしれない。
ここでは、全てではないが商品の価格と共に作成者の名前が書いてあったりしておもしろい。(まるで、野菜売り場のようだな)なんて思いながら眺めた。
初日ということで、早めに戻ることになった。
祖父に戻ったことを伝えに行くと、伯父さんもいて話をしていた。
すぐに挨拶をして下がろうかと思ったが、引き留められた。何かと思ったが、単純にお茶の時間というだけ。
邪魔にならないように、端っこに座り会話をぼーっと聞く。
そういえば、兄さんこの街にいるのかと思っていたがいなさそう。
今どこにいるのだろうか。
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