第2話 転生

 身体を誰かが拘束している感覚がして、声が出る。

「あんぎゃー! うんぎゃぎゃ!」

(え⁉ 声が⁉)

 意図したものと違う声に驚く。


「どうしたの? お腹が空いたの?」

 意識の覚醒中だったので、慌てて声を上げながらジタバタとしてしまう。

 しかしながら、僕を拘束している相手は優しい手つきで頭を撫でてくれていたので心は落ち着いてきた。


 本来なら目の前のぼんやりと見える巨人に不安を覚えたり、言葉を発しようとしたのに上手くできなかったこと、言葉が日本語でないのに理解出来ていることにもっと慌てる必要があるところなのだが、僕はこの状況をなんとなく理解できてしまっていた。

 転生したのだと。

 そして仕事中の揺れと光から、地震の影響で何かが爆発して死んでしまったのだと連想した。 

 痛みを感じなかった事は、不幸中の幸いといったところだろう。


 では、この巨人さんが母なのだと想像することは容易で、しっかりと顔を確認したいと思うのだがぼんやりとしか見ることが出来ない。

 まだ視力が発達していないのだろう。

 髪の毛の色が少々気になるが、 諦めて大人しくしていることにする。


 先程のジタバタが寝起きの慌てた友人を思い出させ、自らに置き換えると恥ずかしくなってきた辺りで眠気に襲われそのまま意識を失ってしまった。




 あの日から二か月程が経過した。

 視力の発達に伴い、一部だが周囲の環境等を知ることが出来た。

 そしてここが異世界なのだと理解した。


 まず家族だが、父に母、そして兄がいる。


 父の名前は『ドーガ』青色の髪で紫色の瞳をしていて、やや筋肉質。

 狩人のようで、朝に出かけ早いと昼、遅くとも夕方には戻って来る。毎回鳥や鹿等を捕まえて来るので、優秀なのだろう。時々荷車を引きながら、町の方へ行っている。


 母の名前は『オリビア』ピンクっぽい色の髪に碧眼。標準体型だろうか。

 基本家にいる。家の事をしながら、僕のお世話だ。


 兄の名前は『ミグマ』青い髪の毛に碧眼。

 庭にいることが多い。時々僕を観察しているが、にこにこしているだけで話しかけてこないので少し怖い。


 各々の容姿についてはうまく評価できない。元が日本人なのでよくわからないというのが正直なところ。 悪くないというか、割と整っているとは思う。


 僕の名前は『バウ』で、紺色の髪に可愛らしい顔だとか。自分で見てないので家族の評価。赤ちゃんの時なんて、みんな可愛い顔だろうし今後に期待。

 犬の鳴き声みたいな名前が少し気になる。


 家は木造の平屋で、部屋が三つに食堂と水場。外にトイレと物置。

 立地としては、山の麓。山脈の入り口というか少し高いところ。

 遠くに山が連なって見える。

 反対側のかなり下ったところに大き目の川があって、その対岸に町があるらしい。その向こうにも山。

 町寄りの丘には牧場があったり、民家が何軒かある。

 山や森といった緑でいっぱい。

 どうみても田舎。

 べたべたした人付き合いが苦手なので、個人的にはありがたい。


 父や母も優しいようだし、恵まれた環境だ。

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