第2話 顔面ボロボロ事件



 ある日、目が覚めると娘の顔はボロボロだった。



「でええ!?なんじゃその顔ーーー!」


「あーうー♪」



 顔には無数の引っ掻き傷。

 しかし娘は楽しそうに笑っている。



「と、とりあえず消毒?かなぁ……」



 授乳をするときに使っていた清浄綿で、そっと傷に沿って撫でる。


 絆創膏はできなくても、これで随分ましなはずだ。



「爪も気を付けて切ってたのにな~」



 だが心配ご無用!

 こんなこともあろうかと、某人気プレママ雑誌で『あってもいいかも』と紹介されていた、引っ掻き防止手袋を用意してあるのだ!



「いやあ、買ってよかったよかった」



 小さな手袋をその手にはめると、まだぶかぶかですぐに落ちてしまう。


 それすら愛しく、にこにこしながら眺め、うとうとする娘に「おやすみ」と呟く。



 なんともいえないしあわせを実感する瞬間である。




 …………2時間後には更なる傷が増え、将来の顔面を想像し冷や汗をかくことになる。

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