56. 魅惑のシャボン玉



「ふーふー!ぴゃああああ」

「もう夜だからできないの!」


 シャボン玉が出来るようになって以来、ちいちゃんは取りつかれたように「ふーふー」したがる。


「いやああああ!あーん、あーん、あぁぁ…」


 雨や夜間は当然シャボン玉はできない。ましてこの寒さの中、シャボン玉なんてわたしが耐えられない。


「いいじゃん、明日しよ?たしか晴れだったし、気温も少し上がるみたいだし、ね?」

「…うん」


 涙をたっぷりためて、うつむきがちに唇を噛みしめ、振り絞るように返事をくれた。涙を拭い、しばしそのまま停止する。


「きゃきゃ、ふーふー」

「いやだから明日だって」

「いやああああああ!!」



 …かれこれもう30分もこんなやり取りしてるんだが。誰か止めてくれ。

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