70. ライフワークはやめられない



 イヤイヤ期の娘は寝る瞬間までイヤイヤ言い続け、倒れるように眠る。その時間は最高23時を回ったほどだ。


「こんな日々が続いたら倒れてしまう…」


 疲労困憊なわたしだが、今は夫が不在だからまだ良い。もしあの生活が戻ってきたらと思うとゾッとする。


 そんな日常の中でわたしを癒してくれるものは、娘の不在を狙った筋トレである。


「ぐっ、うう………うっ、ん!」


 野太い声を出しながらなんとかできるギリギリラインの負荷はきつい。でもそれを弱音を吐きながらクリアする瞬間はたまらない。


 しかし土日など娘とずっと一緒のときはなかなかできない。


「しかたない…割りきって普通にするか」


 娘の目の前で筋トレを始めると、じっとこちらを見つめ、にやっとした。


「まってまって!乗ろうとしてるでしょ!だめだめ!」


 にじり寄る娘に怯え慌てて起き上がると、ふとひらめきを伝えてみる。


「ちいちゃんも一緒にやってみる?」


 開脚し上体を倒すと「ぴたー!」と言いながら真似をする。


「上手~!じゃぁこれは出来るかな?」


 わたしは立ち上がり肩幅に足を開くとスクワットをして見せた。娘も見よう見まねで真似る。


「すごいすごい上手!」

「ひ、いひ、おかーしゃん、じょーじゅーゆって」

「上手上手!」


 と、誉めちぎったせいなのだろうか。



「おかーしゃん、み、みて、じょーじゅーゆってえ!」


 ……買い物にいった先々でスクワットはやめてほしい。

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