2.ちいちゃん'sハイ





 引っ越し初日、知らない場所で久しぶりに再会した父親を見て、ちいちゃんが半べそだったのは言うまでもない。


 それでも夫はめげずになにかと接触し続けた。そして引っ越しから4日が経ったある夜…。



「んきゃ!アハ!ディシーッ」


「ちいちゃん元気だねー、眠くないの?8時過ぎたけど」



 いつもなら少し大人しくなってくる時間で、それが眠気が出始めた合図だ。今日はお昼寝も短かったから、てっきり早く寝るものだと思っていたが……。



「ごはんのときが眠気のピークで、今はそれ越えちゃったかな?」



 いやいやがすごかった夕食はほとんど食べずにお風呂へ直行した。


 しかしお風呂で水遊びでもした気分になったのか、徐々に機嫌は直り、上がる頃にはにこにことしていた。


 そして今に至る…。



 わたしは密かに心配していた。これで唐突に疲れが出て、寝る寝ると大泣きし手がつけられなくなることを。



「きゃは!」


「!ち、ちいちゃん!」



 わたしに飽きた娘は、全く近づこうとしなかった夫の元へ行き、洗い物をするその足にぴっとりとくっついたのだ。



「えええ!?ちいちゃん!?どうしたの!」


「わっかんない!いきなりくっついてきた! 」



【ハイテンションになったちいちゃんは夫へ心を許し、かまってモードに突入した!】



「んきゃ?きゃっ」


「なんだよお、もうかわいいなあ!」



 お腹を撫でくりまわすときゃっきゃっと喜ぶ娘に夫がさらに喜ぶ。その様子に、嬉しさと寂しさが入り交じるわたし…。



「もうあれだね!今日は“ちいちゃん'sハイ”だね!」



 この瞬間、テンションの高いちいちゃんの呼び名が“ちいちゃん'sハイ”になった。

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