30. お祭りだ!炎天下だ!汗だくだ!2




御輿がまだ来ないことになんだか気持ちが萎えてしまったので、ご当地アイスを食べることにした。


「ばあばは県産牛乳のにしたから一緒に食べようねー」

「じゃぁわたしは遠慮なくご当地フルーツのにするわ」



古民家を今風にリノベーションしたお店は今では田舎指折りの人気店で、甘味が美味しい。わたしはゴマをふんだんに使ったチーズケーキが大好きだった。


軒下に木製のベンチが並べられており、これがまたおしゃれで可愛らしい。ちいちゃんはなにかを察知したのか椅子に座ろうと一生懸命鼻息を荒くさせていた。



「あれ、なんか女の人が出てきたけど」



老若あわせて15名ほどの女性が堂々とおみ足を見せ、髪をアップにして紅い法被はっぴからうなじを覗かせている。どうやら芸子・芸者軍団のようだ。彼女たちは田舎を半日かけでぐるりと回り、地元の小企業の前で唄や踊りを披露しご祝儀を賜るのだ。


若手のピチピチガールが見守るなかベテラン勢が踊りを披露する。神社前は大舞台、様々な踊りが披露され、終わると拍手が響いた。


もちろん、ちいちゃんも精一杯パチパチした。



「やだかわいいー!」

「あの子さっき見たよお詣りしてた!」


あっという間にわたしたちの前に芸子軍団がやって来た。甚平を着せているせいなのか、拍手をくれたこどもが視線を奪ったのかは定かではないが、厚がすごい。



「ふぇ」




ちいちゃんは小さく呟くと口をこれでもかとへの字に曲げながら涙を必死にこらえていた。



「あら、お姉さんたちがきれいすぎたかしら」



これを言えるのが芸の道を生きる強者なのだなぁ。

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