第23話 ちいちゃんの食卓





 わたしと夫のこどもとは思えぬほど、向上心と好奇心、なにより成長欲旺盛な娘のために、首が座った頃から使える椅子を買ってあげた。




「ちいちゃーん、これ、ちいちゃんのいすだよ、よかったねぇ」




 柔らかい黄色の椅子。取り外し可能なテーブルがついていて、腰ベルトもあって安全だ。



 試しに、娘を座らせてみた。




「ほぉら!どうかなー?」


「ふっ…」



 途端、にゃああ!うああ~!と泣き始めた娘。わたしは椅子から下ろしてだっこした。



 …まさかそんなにいやだったとは!!!



 ちょろちょろと動く娘が心配で、ご飯のときはだっこしながら食べていたわたしだが、正直、めちゃくちゃ食べにくい!!!



 もしこれで、ほんの5分でも、欲を言うなら10分くらい座っててくれるなら、どんなに楽にごはんが食べられるだろうと希望を込めて購入した椅子。




 買い損だったか…と諦めるわけにはいかず。



 ご機嫌の良いときに座らせて、感触になれさせること3日…。



「はい、ちいちゃん、これちいちゃんのバナナだよ」


「あー、きゃーっ、うーあ!」




 すっかり味をしめていた。




 椅子に座らせ、付属のテーブルをつければあたかも自分も食卓を囲んだ気分なのだろう、差し出された歯固かみかみバナナめをかじる。



 よだれでだらだらなそれはまさしくバナナなのだ!




「…!」



 しかしその横でわたしたちが食事をしているのを見つけると、なんとも悲しそうな顔をする娘なのであった。




「いや、ごめんて…」

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