第74話 年末最後の大仕事1
自衛官の夫は今年は23日から大型連休に入った。
「ただいまぁ」
「おかえりー!」
ちいちゃんをだっこして玄関先でお出迎え。約2か月ぶりの再会は、ちらつく雪で飾られた。
「へへ、へへぇ」
「ちいちゃん…おとうさんのことわかるのかい…?」
夫への人見知りは再発することなく、朝から晩までイチャイチャイチャイチャ…。
「いやあ、もう絶対忘れてると思ったよ」
寝かしつけのあと、暖房の前で小声で話すこの時間がわたしはとても好きだ。
「よかったじゃん」
…あれ?
「珍しいね、毛布かぶって…寒い?」
「うん、すこしね」
夫は眠くなると赤ちゃん並みに体が温かくなるので、冬でも暑がりながら寝ている。
おまけにこの部屋は寒がりなわたしがいても暖かく、暖房の前では暑いと感じるほどだ。
「そうなん?…じゃぁ早めに寝ようか」
本当は久しぶりの再会でこのまま話したいところだが…長距離移動と相まって疲れているのだろう、早めの就寝をすることとなった。
「…ん」
「ハァ…ふぅ…ハァ…ふぅ…ハァ…ふぅ…ハァ…」
え?なにこの荒い息づかい…。今何時?
スマホ画面が午前2時を表示し、わたしはその正体を暗い寝室のなかで凝視した。隣の娘はすやすやと寝ている。その向こうで、荒い息づかいはなかなか止まない。
そっと起き上がってそばに行くと、やはり正体は夫だった。常夜灯に照らされる夫は眉間にシワを寄せ、わたしが近づいてきたことにも気がついていないようだ。
「ねぇ、大丈夫?どうしたの?」
「ハァ、ハァ」
確かな返事も得られぬまま、静まり返った寝室に荒い息づかいだけが響いた。
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