第76話 年末の大仕事3
アラームの音で直ぐに目覚めるわたしだが、今日はいつもより覚醒している。
動けないと言うほどの体調不良に、完全にハイになっていた。
ある程度の身支度をし、いつも通り娘を起こす。娘の身支度を整えたらふたりで朝食。そんな「いつも通り」もどこか緊張し頭のなかはもしものことでいっぱいだった。
起床から1時間半ほどが経過し、娘がテレビに夢中なうちにそっと隔離夫のところへ行き、容態を確認した。
「熱はほとんどおなじだね」
「夜より、少し楽…でもつらい」
夫がどのくらい辛いのかわたしにはわからないけれど、赤ちゃんの娘とこの状況の夫を天秤にかけるように、言った。
「その辛いっていうのは、ほんとうに起き上がれないほど?トイレに行くのも困難なほどってこと?それならすぐに救急車を呼ぶ。そうじゃないなら、救急病院行くよ」
わたしは昨夜飲み会で遅くに帰宅し、まだ寝ていた妹にちいちゃんを託した。
「これからいってくるから、ごめん、お願い」
わたしはなにより娘を守ることに必死だった。
「感染性胃腸炎でした」
夫は感染性胃腸炎患者向けのリーフレットと数日分の薬をもらって帰ってきた。
わたしはこのとき、え?とハテナマークでいっぱいだった。
実は昨年、母が感染性胃腸炎になっていたのだ。
母はもっと高熱でぐったりし、食事もままならない日々が1週間ほど続いたが、熱を自力ではかれない、起き上がれなくて水分補給も困難……とまではいかなかったのだ。
もちろん、感染した細菌、個人の免疫などにより、差が出るのかもしれない。そのことを考慮した上で、昨夜のことを聞いてみたのだ。
「あー、うん、全くってほどじゃない。でも力いれるのだるくて」
…わたしはこの7日後、保菌しつつも完全復活を遂げた夫の前で緊張の紐が解けたかのように体調不良で倒れた(もちろんたっぷり睡眠で一晩回復でした)。
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