10. 此度、地震がおきまして





 それは娘が寝付き、夫婦共々寝落ちした1時間ほどあとのことであった。



 グラグラグラグラッ…



「地震!」


 ガバッと飛び起きると、同時に夫も飛び起きていた。


 普段、ちいちゃんが爆泣きしても滅多に起きない夫。


 普段、だらんとした力抜けまくりの顔しか見せない夫。


 寝起きの覚醒が遅く、起床後2時間は使いものにならず、好きあらば眠る夫。



 その夫が、はじめて私の前で見せた自衛官仕事をするの顔。


 窓際に寝ていたわたしは、隣のちいちゃんを抱き抱え、壁際の夫の布団へと急いだ。夫も少しこちらへより、私たちを抱き止めた。


 揺れが収まるとすぐにSNSで震度を確認し、立ち上がった。



「行かなきゃ」



 不安と動揺に支配された瞬間だった。

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