54. クリスマスを感じる11月




『今年もクリスマスがやって来る…冬支度、始めませんか?』


 ハロウィーンが終わると、CMは一気にクリスマス仕様に変わる。お店にもクリスマスや年末を見据えた商品や広告が並び、日本中が冬の商戦に向けて大きく舵を取るのがわかる。


「クリスマスかぁ、去年は実家にいた上、引っ越すことがわかってたからあえてあんまりしなかったんだよなぁ」


 ちいちゃんがまだ0歳だったこと、つかまり立ちをしていたことなどから、ツリーは見送り、ケーキ擬きの制作とガーランドを飾るにとどめた昨年。だが今年は「クリスマス」というものをしっかり経験してもらいたい!ちいちゃんのなかに楽しいものと言う記憶を持ってほしい!



 …ということでまず某100円均一に行った。


「別に安物で済まそうとかそういうのとじゃないからね、うん」


 必要なものをカゴにいれ、クリスマス用品を見ていると、可愛らしいものに目が止まった。


「サンタさんのウォールステッカー!」


 実は我が家は、動物のウォールステッカーが貼ってある。引っ越してきて、殺風景な部屋が少しでも娘にとって楽しい空間になるようにと購入したものだ。


 シールを貼るという作業は、子供にとってすごく楽しい。わたし自身、6歳くらいの頃にシールを集めたものだ。


 おまけに最近のウォールステッカーはグレードが高い。お洒落でかわいいし、何度も張り直しが出来る。100円で買えるからコスパがいい。2種類購入し、自宅へ戻るとさっそく張りたいちびっこがやって来た。


「きゃきゃ、ん、ん!」

「ウォールステッカーだね~、したいの?」

「ん!」


 大きく頷くと下膨れのほっぺが際立ってかわいい。さっそく、玄関の白い壁に貼ることにした。


「よーしちいちゃんどんどん貼るよー!」


 サンタさん、プレゼント、星、トナカイ…様々なステッカーがちいちゃんによってランダムに並ぶ。お家は逆さまだし、プレゼントは傾いてるし、星が重なって張られてるけど、それでいい。


 そして我が家にもうひとりの家族が帰ってきたとき、玄関の小さなアートを見てほっとすればいい。


 12月産まれの夫、誕生日はクリスマスとセットの夫、けして楽ではない人生を歩んできた夫、普通の家族の幸せを知らない夫、そして今、ようやく一緒に暮らし始めた家族と半年離れて東海で頑張る夫。


 今までのすべてのが、「普通の家族」という何でもない日常しあわせを当たり前に感じてくれる瞬間が、これから、訪れる気がして。



 今年のクリスマスは特別だ。夫の誕生日を兼ねず、娘にとってはじめてのクリスマス準備、そして家族としての普通の時間が、ようやくゆっくりと流れる特別な時間になるだろう。



 次は小さなツリーを買おうと思う。我が家の小さな賃貸に見合う、ちいちゃんでも飾りつけを楽しめる高さの、小さなツリー。


 予算は4,000円なので、やはり小さいくらいがちょうどいい。

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