53. ぱんぱん、なあい




「ぱぱん、な~い……ぱぱん、な~い」


 悲しそうな顔で訴えるちいちゃんに、わたしは困惑した。


 いや、目の前にあるし…。


 と、いうのも、出先で唐突にパンが食べたくなったわたしは、帰宅後ちいちゃんと近所のパン屋さんへ出掛けた。


 店主の気まぐれなのか、週に2日しか空いていない日もあるようなお店であまり行ったことはないが、パンがショーケースに並んでいるのでちいちゃんがさわってしまう恐れもないため安心して帰るのが高ポイントだ。自宅から150mほどという立地もいい。


 昼食は鶏かぶ炒めと決まっていたため、1個ずつパンを買っておやつに食べることにした。嬉しそうにパンを持って、手を繋いで帰るときはとても幸せで、寒さも和らぐような気さえする。


 昼食前だが小さいから、手を洗ってからねと話すと、パンをおいて洗面台に直行、無事に洗い終えると……。



「ぱーん、なぁい」


 なんて悲しそうに!!でも目の前にあるよ!!


「ぱんぱ、なぁい…ぱんぱ、ぱんぱ…」

「ないの?パン?」

「なぁい、なぁい…ぱんぱ……!!」


 !!


「たあ!」


 ついにみつけたーーーーー!!!満面の笑み可愛すぎかーーーーー!!



 可愛い娘を見つめるため、昼食は手を抜いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る