36. 真夏のメイクは一番最後に
なんやかんやとあっという間にすぎた休暇、最終日は朝から30度の晴天だった。
「よし!やるぞ!シーツを全部はずしてカーテンも取って!」
「うす!」
実は我が家には踏み台や脚立の類いがひとつもない。そのため電球も換えられないし作り付けの棚の上段も全く手が届かない。カーテンもそうだ。
「ずっと洗いたかったんだよー、テレビで年4回くらい洗ってくれって誰かが言ってた」
「そんな洗う?」
普段の洗濯、全員のシーツ、カーテンの順に洗い、時刻は既に10時を回っていた。
「ごめん、これ終わったら干しといて、支度する」
普段は夫に洗濯物干しは絶対に頼まない。下着見られる問題もちびっとあるが、あの干し方が許せないのだ。角ハンガーにびろーんと干されたTシャツ、バランスをとれず物干し棹にぶつかることでなんとか垂直になるのを防いでいる傾き、シワも伸ばされていない綿素材のハーツパンツ…。初めてみたとき、夫のものしか干してないのに思わず干し直してしまった。
でも今回は問題ないはず、だってカーテンだから!
あんな角ハンガー偏愛者が唐突に、まして1×2mのカーテンをハンガーに干すわけないし、シワになりにくい素材のカーテンだから多少変な干し方でもオッケー!晴天38度で乾かないわけないしね!
髪をブローしメイクを仕上げて車のエンジンを掛けに外へ出た。玄関の向こうはサウナ状態で今にも溶けそう。車内は恐ろしい暑さでエアコンを最大に活躍させる。
戻ろうと振り返ると、どの家も洗濯物で一杯だった。我が家もそう…
「て、おいいいい!」
ダッシュで戻るとベランダの手すりからだらりと傾きがちにカーテンがぶら下がっていた。それを押さえるのは力の弱い布団ばさみ。そのほかは角ハンガーにアンバランスに干され、残り一枚は物干し棹にギリギリ引っ掛かっていた。
「なんじゃこりゃあ!!」
メイクは溶け落ちた。
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