44. 母ちゃん蚊帳の外
支援センターにもすっかり慣れたちいちゃんは、わくわく広場という名前の支援センターが大好き。小規模だし利用者もけして多くはないそこがちいちゃんのお気に入り。
「ちいちゃんおはよう~、なにして遊ぶ?」
わくわく広場では専属の保健師1名体制のため、いつも同じ人がいるというのがちいちゃんにとっていいようだ。
だいたい、まずは小さい子用のしまじろうやワンワンのおもちゃに食い付き、ぬいぐるみ、おままごとという流れで進行していくパターンが多い。
「きゃきゃ!ん!だっ…ちん!」
「わー!上手にざっくん出来たねー!」
当然こうして誉める。
「へへー、イエーイ!だっ、ちん!だっ、ちん!だっ、ちん!」
「おうおう…今日も元気だな…」
来るたびに30分ほどひたすらざっくんシーンを誉めるという遊びをする。個人的にこれがきつい。元々おままごとをして遊んでいなかったわたし。おままごとの体制がないうえ、普通のやり取り遊びならまだしも、延々ざっくんリピートに心がすさむ。わたしは童心を手放してしまったのか。
「ちいちゃん上手だね!」
「ん!ん!」
「わあ、ありがとう!おいしそう~、先生はももから食べようかな!あーん……おいしいっ!もぐもぐ…あ~喉乾いちゃったなぁ、先生ジュースが飲みた~い」
ちいちゃんは長文に一瞬ポカンとしたあと、「ジュース」と小声でもう一度教えてもらうと、コップを持ってくる。
「ありがとう!おいしい~何ジュースかなぁ?ちいちゃんも飲んでみる?」
「ん!」
……さすがすぎる。わたしお自宅でおままごとして、同じ感じでしてもこうはならないんだよなぁ…何が違うんだ。こどもとの距離の詰め方がプロだな…さすが。
とまぁこんな感じになると次第に…
「ざっ、ちん!」
「上手~!今度はアンパンマンにあーんしてみようか」
「あー…ん!」
「ん!って言い方すごく可愛いね」
「ん!」
………なんか母おいてけぼり。
いいんですけどね、成長したなぁってことで。
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