33. 一緒にいる理由
「そういえば前、隣の家の中学生が入り口でたむろしててさ~通れなくて焦ったよ。中学生とはいえ男子数人にちいちゃんと荷物抱えて何かあったらと思うと何も言えなくてさ…考えすぎかもしれないけど、隣人関係は穏便に済ませたいしね」
「俺なら『おい、邪魔になってるのがわからないのか』って言っちゃうわ」
「こわーい」
夫はこういう注意を出来るタイプだ、わたしはなんだか怯んじゃって言えない。
思えば学生の頃も電車通学中にお婆ちゃんのために入り口が閉まらないように待っててあげたり、邪魔になってる同級生たちを動かして影で降りられなくなってた小柄な女の子とかを通してあげたりしてたなぁ、なんだか昔から自衛隊っぽい。
「あ、そういえばこの前、管理会社に連絡した件まだ何も来てないなぁ、急ぎですっていったのに」
「え?まだなんもないの?そりゃぁだめだなぁ、ちょっとわたし電話するわ」
え?と驚く夫の目の前でわたしは管理会社に電話し、返答を急いでいる旨を伝えた、ちょっといやーな言い方で。
「…よくできるね、俺には無理だわ」
「そう?本当は『御社のような優秀な大企業でしたら即日回答を戴けると、そうでなくても時間のかかる旨ご連絡いただけるかと思っておりましたがそんなことないのですね~』とか言ってやりたかったけどかわいそうだからやめた。クレーマーになるつもりはないからね、ただ『あそこん家めんどくさいからちゃんとしといたほうがいいよ』って印象にしといた方が楽ってだけ」
「こわーい」
コールセンターや営業補佐事務をしていたせいかこういうものには強い。
わたしたちは考え方も違うし「合うの?」といわれることも度々だが、こういうお互いの苦手を補ってるところが一緒にいるゆえんなのかもしれない、と思った。
「─アレ以来、出られないので妻のところにお願いしますって言ってもこっちにかかってくるんだけど」
…こわかったのかな。
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